ニッケイ新聞 2009年6月18日付け
公務員の縁故採用が最高裁で禁じられたにも関らず、上院で暗黙の取引が継続していたことが表面化、その一人として告発されたサルネイ上院議長(PMDB)は十六日、上院本会議で「それは上院の問題であって、私の問題ではない」と無責任発言を放って憚らないことからひんしゅくをかったと十七日付けフォーリャ紙が報じた。赤信号は上議全員で渡ったのだと連帯責任を訴え、反省の様子は一顧だにない。
最高裁は二〇〇八年八月二十日、満場一致で三権と地方自治体における縁故採用や閨閥主義を管轄省庁以外の公的機関でも禁じる決定を下した。
違反者は与党PT(労働者党)を始め連立のPMDB(民主運動党)、野党のPSDB(民主社会党)と上下両院の広範囲にわたり、検察庁も捜査に乗り出した。
今回スキャンダルが暴露されたことにより、たとえ今は責任を問われないとしても、二〇一〇年選挙で上議八十一人のうち五十四人が、選挙の禊を受けることになる。多くの議員は、ライバル議員と取引をするのが通例だ。そのための代償として、数々の違法行為がまかり通った。
ブラジルは、二十七政党と多すぎる。そのため党態勢の確立が困難だから、政治目的ではなく営業目的の政党を探し、倫理不在の取引をする。
上下両院議長は、二年毎に選ぶ。そこでPMDBは、こうもりのような存在となった。サルネイ議長の選出はPTとPSDBには不都合であり、政界地図を複雑にした。
大型予算の獲得手続が杜撰で、上下両院執行部はその甘い汁が吸える特権階級だ。予算獲得に関する規定がないため、不正行為が入れる余地が多分にある。そこで交換条件や代償がものをいう。
ここに友人の誼(よしみ)や暗黙の行為、公然の秘密、違法時間外手当、経費の水増しなど不正行為を許す背景が議会に存在する。政府高官らには不正入札や談合を行える権限があり、権限温存のため代償上納には目がない。
このようなスキャンダルは過去に何度もあり毎回、表面化すると生贄を仕立てて難を逃れた。最近では裏金疑惑でジルセウ前官房長官とジェフェルソン元下議、コレーア下議が議会から追放されたのは記憶に新しい。
今回のスキャンダルも手口は、ほぼ同様で裏金と公金横領の口止め料を縁故採用の看過で見返りとしていた。だから問題は議会にあり、個人ではないというのだ。それよりも公職生活五十年の上院議長を告発するのは、不謹慎だというのだ。