ニッケイ新聞 2009年7月8日付け
【静岡新聞】日伯移民百周年を機に、静岡文化芸術大(浜松市中区)と同市内の高校に通う日系ブラジル人の若者が昨年七月に行った座談会の内容が冊子とDVDになった。〃日本育ちのブラジル人〃としての、国籍の考え方や将来への思いが詰まった内容。学生たちは「教育現場などで活用してほしい」と話している。
「自分は何人ですか?」「帰国したいと思いますか?」―。座談会ではこんな質問が飛び、四時間にわたって熱のこもった議論が繰り広げられた。企画の中心は同大文化政策学部四年の林ケンジ・クラウジオさん(21)、ともにデザイン学部二年の金城ジゼレさん(20)、タテベ・サユリさん(19)の三人だ。
市内の普通高校に通うブラジル人の女子生徒ら八人が参加し、進路や親との関係についての悩みや「『外人』という言葉に抵抗がある」など複雑な気持ちも明かした。タテベさんは「本音をぶつけあえた場。外国人という立場の悩みを共有できて安心した」と振り返る。
座談会の終盤では「ブラジル人も日本人と一緒で同じくらいの可能性がある。堂々と生きたい」など、若者らしい前向きな意見が出た。「ブラジル人の子どもたちが進路を考える機会になればうれしい。日本人の親世代にも見てほしい」と金城さん。企画のリーダーとして奔走した林さんは「身近にいるブラジル人の内面や、深い部分を知ってもらえたら」と話した。DVDは二十三分に編集した。希望者に貸し出すほか冊子も配布する。問い合わせは同大の池上重弘教授〈ikegami@suac.ac.jp〉へ。