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第48回パラナ民族芸能祭=クリチーバ=2千人が日本に酔いしれ=サンパウロからも応援団

ニッケイ新聞 2009年7月11日付け

 【クリチーバ発=金剛仙太郎記者】パラナ州民族交流協会(AINTEPAR)主催の第四十八回民族芸能祭が一日からパラナ州クリチーバ市で始まり、八日夜、クリチーバ日伯文化援護協会(山脇ジョルジ会長)による公演が同市グアイーラ劇場で開かれた。祭では若者による迫力ある太鼓演奏や、力強いYOSAKOIソーラン、日本の情景が浮かぶ民舞、花柳龍千多さん(日本舞踊花柳流名取)の門下生による日本舞踊、コーラスなど、繊細さと迫力を兼ね備えた二時間の舞台を作り上げ、会場は二千人の観客で埋め尽くされ〃日本〃に酔いしれた。

 静まり返った会場に横笛の美しい音が響き渡り、揃いの半被を着た若葉太鼓の力強い演奏で幕開け。一糸乱れぬ演奏に観衆は一気に引き込まれた。
 続いて、龍千多さんから指導を受けた同文援協舞踊部の生徒達が手に藤の花を持ち、抑揚のついた歌に合わせながら、日本舞踊「藤娘」を披露。着物の袖をかえすたびに描かれた色鮮やかな藤の花が現れ、踊りに彩りを添えていた。
 同文援協の若葉YOSAKOIソーラングループはほとんどが非日系人。鳴子を持ちながら、体全体を使い「ソイヤー、ソイヤー」と波をイメージした踊りや、網を引っ張る仕草で会場を盛り上げた。
 総勢四十人以上が舞台に上がった琉球國祭り太鼓はサンパウロ市からの参加。黄色や赤、青色が映える揃いの衣装を着て演奏。太鼓捌きと、体を回転させながらリズムのある踊りで、琉球世界一色に。
 民舞愛好会のメンバーが踊るのは、お馴染みの「日本音頭」。水色を基調とした浴衣に身を包み、団扇片手に懐かしのメロディーで日本の夏を演出した。
 生長の家コーラス団は愛と友情をイメージした劇と共に、歌を披露。真っ白な衣装で登場した大嶋裕一同文援協副会長(実行委員長)は、ニプソン楽団の生演奏と共に「島唄」を力強く歌った。
 第二部は揃いの緑の半被を着た、若葉太鼓の十三人の女性メンバーによる、力強い演奏で幕を開けた。
 日本舞踊「天津の舞」では烏帽子のような背の高い冠を被り、鮮やかな水色の直衣と指貫を着た男性と、真紅の着物を着た女性が赤を基調とした扇子を右に左に軽やかに舞って見せた。続く「夕鶴の舞」では、鶴と空をイメージした青い衣装でしっとりと踊り上げ、扇子を使った鶴の舞のポーズが決まるたびに拍手が送られた。
 ブラジル琉球舞踊協会による「花の松竹梅」では、黄、赤、青色の鮮やかな沖縄の紅型染めの衣装と三線の音色に合わせて六人が踊った。
 舞台の最後は、出演者約百人総出で「春夏秋冬」を踊り二時間の公演のフィナーレを飾った。
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 「もう戦争でした」――。今回は裏方に徹して弟子達の活躍を見守った龍千多さんは公演後、感想を語った。サンパウロ市から月一度、三日間日本舞踊を教えに通い始めて十八年。「生徒が待っていてくれるから続けられる。本当に幸せ」と生徒らに囲まれながら嬉しそうに気持ちを表した。
 大嶋実行委員長は「大きな舞台で若い子も多く、やりがいがありました」と振り返る。舞踊部の林ドラリッセ部長は「たくさんお客が入り嬉しいです。旦那や家族の理解があっての成功です」と喜んでいた。
 「藤娘」を演じた久保マリ・エウビーラさんは元舞踊部長。「舞踊はただ踊るのではなく、唄や踊りに日本の心が入っている。裾引きや笠被り、花などいろいろ使うので難しかった」と話す。
 若葉太鼓として出演した梶原安正さんは「リズムが少し狂ったが、よく出来た。来年の曲も今から作っており楽しみ」と意気込みを表わした。
 北海道協会の木下利雄会長は、「毎年楽しみにしている」と、二十人の応援団を引き連れてサンパウロ市から飛行機で駆けつけた。公演終了後、観客で二世の古川孝夫、和恵さん夫婦は「若い人が年々増えていて元気がよい。本物は力強くていいね」と満足そうに話した。
 パラナ民族芸能祭は、各民族の伝統芸能の継承を目的に、同交流協会が毎年七月ごろに開催。ドイツやイタリア、スペイン、ウクライナ、など十以上の民族系コミュニティが参加し、後日、公演の来場者数などを基準に優勝グループを決める。昨年の同文協の公演では約二千人が来場し、総合二位だった。