ニッケイ新聞 2009年7月11日付け
西域はロマンが豊かである。ラクダの背に荷を積みタクラマカン砂漠を進むシルクロードの隊商を思い浮かべるのもいい。あの仏教文化を今に伝える敦煌もあるし、夢はふくらむばかりなのである。こんな夢想をも荒々しく引き裂くような暴虐が起こりウイグル人は次々に殺害されているの悲報に唯々―慄然とする▼中国は「民族問題はない」と語るが、これは真っ赤な嘘である。暴動が発生している新疆もだし、チベットの騒動もある。敢えて言えばーあの「中華帝国」は漢族が90%超を占めているけれども、この他に55もの少数民族がいて何かと騒々しい。新疆ウイグル自治区の人口も、漢民族は5%にしかいなかった。ところが、最近は50%もおりウイグル族との対立抗争が厳しい▼この暴動はウイグル人の出稼ぎ2名が漢人に殺されたのが引き金になっている。これへの抗議デモが過激になり商店や車の放火になったらしく、これに漢人らが反撃している。一部にはウイグル人の死者は800人の情報も流れているし、特派員の現地報告だと、とにかくウイグル人への迫害が酷く、住宅街は武装警官に取り囲まれているそうだ▼あそこのウイグル民族はイスラム教徒であり、中国の支配には強く反発し、これまでにも何回となく抵抗している。あの地域には石油やガスなどの地下資源に恵まれており、中国としても「独立」を簡単に認めることはないであろう。しかしーだかと言って軍隊や警察官による武力と民族弾圧だけで問題を解決しようとしても国際世論は納得しまい。 (遯)