ニッケイ新聞 2009年7月16日付け
OECD(経済開発協力機構)のエンジェル・グリーア事務局長は十四日、ブラジル政府に対して減税による景気対策を避け、公共経費削減などを優先するよう提言と十五日付けエスタード紙が報じた。OECDはブラジルの〇九年度GDP(国内総生産)を〇・八%とする報告書を発表。減税は国際経済が悪化した場合にのみ行い、景気回復の曙光が見え始めた現在、均衡財政に努力すべきだという。これから政府が傾注すべきは、流通量が不十分な市場に融資を供給することとしている。
減税政策は資金の流動性を妨げるばかりでなく財政状態を脆弱化し、国家基盤を軟弱にするとOECDは見ている。これはOECDが、三十カ国の財政分析を行って得た結論だ。
ブラジル政府は昨年九月の金融危機以来、自動車や生活家電、建材、資本財などの部門に減税政策を打ち出し、景気浮揚に努めた。「景気回復は短期間に達成しないと、経費ばかりが増える」とOECDが助言した。
公共経費には上限を設け、均衡財政のメカニズムを設定すれば、投資家が安心することになるとOECDはいう。
それに対し、マンテガ財務相は「ブラジルには均衡財政の問題は存在しない」とOECDの懸念を否定した。金融危機を克服するため政府がIMF(国際通貨基金)などに負担した資金は、他国の情況と比較すると軽微だとハッタリを利かした。
これまでに総額で百五十億レアルとなった減税政策だが、政府にはそれほど負担になっていないという。五千億ドルを投じた中国から較べたら、微々たるもの。「ブラジルは僅かな負担で大きな成果を得た」と財務相は満足の意を示した。
OECDは、ブラジルの消費需要が〇九年下半期から一〇年の長期にわたってGDPを引き揚げ、年間で四%達成と見ている。ブラジルは金融危機を容易に克服できるから、基礎収支で対GDP二・三%の黒字を計上、公債の縮小に努めるよう提言した。
マンテガ財務相は「目標達成のため、全ての努力は遂行済みである」と反論した。それでもOECDは中央銀行に、政策金利の引き下げと強制供託金の免除、預金の一部預託解除、中銀の手持資金減額を求めた。
これら制限政策は徐々に行い、金融市場の流通性改善に努めるようにOECDが要請。またインフレ目標も、二〇一一年から小幅に緩和すること。インフレについて財務相は、年間四・五%は絶対的なもので小幅も大幅もないと反駁した。