ニッケイ新聞 2009年7月18日付け
十二日の援協チャリティショーで一千二百人を感動と笑いの渦に巻き込んだ浪曲の国本武春師匠、三味線の沢村豊子師匠、ピアニスト・作曲家の宮下和夫氏が、十五日午前、サンパウロ市援協本部で行われた記者会見で大盛況だったブラジル公演の感想を語った。
七十二歳で初めて海外の土を踏んだ沢村師匠。「楽しくて、度々来たいくらい気に入った。皆さん親しみがありますね」と穏やかな口調に満面の笑みを浮かべて話す。ブラジル公演に旅立つ直前に滑って頭を打ち、首にコルセットを巻いての渡伯にも関わらずだ。
ショーでは国本師匠の語りと息ぴったりの三味線で、観客を酔わせた。「皆さんよく笑われるから、つい私まで笑ってしまいそうになった。楽しく弾かせてもらいました」
一年間アメリカで文化庁の文化交流使として活動していた国本師匠だが、本格的な浪曲を海外で披露するのは初めて。二十年ほど前、国本師匠がカバン持ちをしていた浪曲師の天中軒雲月師匠が、「ブラジルの人はよく聞くぞ。熱心で、熱狂的だぞ」と話していた言葉を振り返る。
天中軒師匠の来伯公演を覚えている読者もいるかもしれない。
「師匠の言っていた通り日本の人以上に笑ってくれて、日本文化を自ら楽しもうっていう気持ちが伝わってきた」と驚き、「異国の地で日本を背負い日本人より日本を想っているなと感じました」。
「ふるさと」ピアノソロで観客を懐かしい日本へと連れて行った宮下氏。「演奏しながら皆さんがご苦労されて立派な日系社会を築かれたことを考えたら、涙が出そうになってしまった」と振り返る。
宮下靖子バレエ団の代表であり、作曲や音楽監督も務める多才な宮下氏。「ブラジルとダンス交流をしたい」と、今後も日伯交流を続けていく意気込みだ。
十一日にイビラプエラ公園の慰霊碑を訪れ、手を合わせた三氏。また憩の園、あけぼのホーム、サントス厚生ホームで慰問公演を行い、十五日はトメアスー入植八十周年記念「サンパウロ前夜祭」出演と、多忙な日程をこなした。さらに国本、沢村両師匠は十七日にパラグアイ、十九日にパラナ州ロンドリーナで公演する予定。