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末恐ろしい元締め役は11歳=麻薬の巣窟クラコランジア=州と市が取締り新作戦開始

ニッケイ新聞 2009年7月23日付け

 カサビサンパウロ市長公約のルス地区再生計画の中心地クラコランジアなどで、二十二日から新たな麻薬取締り作戦開始と同日付伯字紙が報じた。
 五日の市警の取締り作戦では、二六五人が連行されながら、翌日は元の状態に戻っていたというクラコランジアは、クラッキを中心とした麻薬売買と麻薬常習者の多い事で知られる地区だ。
 エスタード紙によると、同地区のグアイアナゼス街やヴィトリア街で麻薬を売るグループは三つで、販売額は月に六〇万レアルにも及ぶ。
 グループでは少年を使い麻薬を売りつけるが、地元住民に最も知られるマウリシオと呼ばれる男性のグループでは、妻が製造を指揮し、息子達が売買を担当。特に、二番目で一一歳の通称カペッタは、住民が父親以上に恐れる影の元締めだ。
 売り子の見張り役を夜通し務めるカペッタは、通りがかりの車の運転手や地域住民が麻薬を買わなければ、銃を持っている振りをして脅す他、「火をつけるぞ」、「殺すぞ」と脅迫する事も。
 父親は、強盗犯として入牢時に首都第一コマンド(PCC)と関係し、麻薬密売を始めた人物だが、これら密売者達が麻薬を売りつける相手は、中流階級の人も多い。
 この地域で麻薬が容易に手に入ることから使用量が増え、常習者となった人の中には、夫は売買に加担して投獄され、妻と生後一一カ月の子供は物乞いしながら路上生活という夫婦もいる。
 この妻は、「子供には麻薬は使わせたくない」と言いつつ、麻薬から抜け出す方法が判らずにいるが、これら常習者の更生を第一にしたのが、今回の州と市の取組みだ。
 クラコランジアとその周辺のレプブリカ広場、ジューリオ・デ・メスキッタ、ヴァーレ・ド・アンニャンガバウなどを対象とした新作戦は、連行した常習者を精神科医などに診察させ、中毒患者向け施設に収容する事や、出身地に帰りたい人への旅費支給、職業訓練なども考慮している。
 警官より精神科医や心理学者が多く、州や市の福祉担当職員らも加えた新作戦。これが効を奏すれば、麻薬からの脱却だけではなく、その後の生活の基礎も出来、再出発への道が開かれる。