ニッケイ新聞 2009年7月25日付け
なんとも人騒がせな日食である。インドの北部では、宗教的な沐浴をする河に「どうしても見たい」のフアンが6万人とも7万人かが押し寄せ死亡者もでたし、あの上海の皆既日食はなんと434年ぶりだそうだからーこれはもう騒がない方がおかしい。そして、6分25秒も観測できるはずだったトカラ列島の悪石島は、強い雨と雷のため黒い太陽が見られなかったのは真にもって残念無念▼だが、23日付け弊紙で報じた写真のように北硫黄島沖で国立天文台の船が観測に成功したのはよかった。ダイヤモンドリングもきれいに見えたし、奄美諸島の喜界島でも薄い雲越しではあるが観測でき天文大好きの人々は大いに楽しみ、宇宙の壮大な動きに感動したのは素晴らしい▼それにしても、大学の専門家や学生らが乗った鹿児島大水産学部の練習船「かごしま丸」は高知県室戸岬の沖600キロにまで出かけたのに太陽が月に隠れる直前にぶ厚い雲が発生し夢にまで見た観測はだいなし。甲板には教授たちのため息が漏れたそうである。それでも先生たちは「無念だけど、せめて部分日食だけでも」とカメラを手放さない▼と、悲喜こもごもながらトカラの島々の人情は厚い。2年も前から観測客の受け入れ準備に入り宿舎や医師の配備、食べ物への配慮など大変な苦労を重ねている。鹿児島大学に医師と看護婦を送ってもらい、高齢者も多いからと自衛隊に緊急のときにはヘリコプター派遣も依頼している。幸い大きな事故はなかったが、こうした島の住民らの熱い情愛があったの話も忘れまい。 (遯)