ニッケイ新聞 2009年8月5日付け
コロンビアのウリベ大統領は三日、ルーラ大統領に米軍基地の拡張を説明し諒解を得るための緊急会議を行うことを要請と四日付けフォーリャ紙が報じた。訪問予定は六日、その前日には米大統領特使も同件で訪伯する。ルーラ大統領は、六、七日に予定していたマラニョンとピアウイーの公共工事落成式などへの参加を中止。また米紙「ニューヨーク・タイムス」は、ベネズエラ政府高官とFarc(コロンビア解放前線)のつながりが、疑う余地のないものであると報道した。
米戦略構想では、コロンビアで拡張するパランケロ米軍基地は世界中に配置する三十九基地の一つで、大型爆撃機と大型輸送機の離着陸が可能なものにする。米軍は二〇一五年から二〇二五年までに、世界各地で四十四基地を増設する計画だ。
それでは何故、コロンビアなのか。背景に何が起きているのか、説明は全くない。
同基地に配置される大型爆撃機は、操縦士三人と兵士百三十四人、武器弾薬などの積載能力七十七トン級のC17グローブマスター。航空能力は半径三千七百キロ、往復で六千四百八十五キロを無給油で空輸できる。
コロンビア米軍基地の拡張は、軍事インフラの整備。米国内で次期紛争のシナリオを書き、舞台装置の準備をしているようだ。設置されるのは給油ポストだけでなく、大型爆撃機の整備工場も本格的に稼動させる。
初めは、ペルナンブコ州レシッフェがアフリカと南米を結ぶ米軍空輸基地の候補にあったようだ。しかし、政治的理由と遠距離のため、ブラジルは外された。
中南米で外交的不均衡を生じさせたコロンビアでの米軍拡活動について、ウリベ大統領は各国を訪問し説明するという。その中へウナスール(南米同盟)も組み込み討議をする。同首脳会議は十日、キトーで開催予定であるが、ウリベ大統領は欠席を通知。そのためルーラ大統領に、理由を説明する。
ルーラ大統領は、南米における米軍の活動をウナスール会議の重要議題とする考えであった。基地拡張の表向き理由は麻薬対策というが、ベネズエラとロシア、イラン接近への威嚇行為であり、南米諸国が国際的謀略へどのように巻き込まれて行くのか懸念する。
またニューヨーク・タイムスが諜報機関から得た情報として、エクアドル領内のFarc基地は現在も健在という。ベネズエラと麻薬組織、ゲリラの連携は、コロンビアとベネズエラの外交関係で頭痛の種になるだろうと見ている。