ニッケイ新聞 2009年8月8日付け
チベットの宗教指導者ダライ・ラマは六日、民主化運動で国際的名声を強めているルーラ大統領に中国首脳部と接触の際、「チベットの民主主義と自由」に触れることを懇請と七日付けエスタード紙が報じた。
ブラジルが最近国際的影響力を高めていることで「民主主義と自由」の価値を世界、特に中国へ訴えて欲しいというのだ。同師はいま、亡命中の身でジュネーブに滞在している。
「中国が大国と考慮されるためには、経済力だけでは不十分。経済力だけでは、世界から大国視されない。大国となるためには、真実と誠実が必要。中国が将来、大国として崇められるため、これを欠いてはならない」と同師が訴えた。
米国を含めて多くの国々が、中国へ接近を試みている。しかし、同時に中国の政治システムに疑問を抱いているのが現実。全ての国は、正当な政府として中国にも民主主義を求めている。
中国政府は、国民を騙していると同師はいう。中国には民主主義が導入されない限り、選択の自由がない。中国は寡占政治であり、汚職の殆どは共産党員が犯していることで、失政は明らか。
中国に平和をもたらすのは、経済力でもマルクス主義でもない。同師は一九五四年、革命に期待して共産党へ入党志願したこともある。中国が導入したのは、国家主義的資本主義であった。六十年を経たいま、引退の時期にあると同師はいう。
チベットは独立を求めているのではなく、自由を求めているという。チベットの外交政策と国防政策は中国に任せても、宗教と教育、医療、行政はチベット国民に返して欲しいと叫んでいる。
中国刑務所に現在、四千人のチベット人政治犯が囚われている。彼らは衝動的に自由を求めたのではない。子々孫々にわたった民族の血が、自由を求めたのだ。ブラジル国民にも、それを分かって欲しいと願っている。