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移民と在日ブラジル人の教育比較=日伯で共同研究開始=外国人子弟教育改善にも=資料提供を呼びかけ

ニッケイ新聞 2009年8月12日付け

 国際交流基金の知的交流会議助成プログラムの研究プロジェクト「子供の移動と教育―戦前・戦中期ブラジル日系移民子弟教育と在日ブラジル人子弟教育の状況比較研究」の発表記者会見が七日午後、基金サンパウロセンターで行われた。研究代表者の根川幸男・ブラジリア大学助教授は、「今まで両者は別個のテーマとして研究されるのみだった。画期的な研究になるのでは」と意気込みを語った。

 二〇〇六年から戦前・戦中期における日系教育史を研究している根川氏。昨年は基金を通して訪日し、インタビューや資料を基に日系教育史を公の形で残すことを目的に研究を進めてきた。
 今研究では、早稲田大学移民・エスニック研究所(森本豊富所長)とパートナーシップを組み、経済危機後にようやく深刻に取り沙汰されるようになったデカセギ子弟教育をテーマに組み込む。
 「デカセギ子弟が直面している問題が、すでに先行的に現れていて、解決策が模索されていたのでは。両者の共通点や相違点をみることで、解決策の模索、異文化適応、複数文化体験を通じての教育の可能性について議論することができる」と根川氏。
 加えて、「あの大正小学校でさえ記念誌が一冊も残っていない。ハワイや北米、カナダの日系移民教育史に比べると、ブラジルのそれは貧弱。研究蓄積を今しなくては」と訴える。
 記者会見には、来伯中の共同研究者である森本所長、ミックメーヒル・カイラン大東文化大学教授・NPO法人多言語教育研究所理事長、中野紀和・大東文化大学准教授、随行の同NPO広報係の斎藤敦さんが同席した。
 この三氏を含め、それぞれ専門を持つ十一氏が日伯で一年間にわたり共同研究を進める。一〇年度の国際会議開催を予定しているほか、日本移民学会大会や二カ国語以上による報告書などで結果が発表される予定だ。
 根川氏は、「この研究を通して、在日外国人子弟教育を取り巻く環境を整えることができれば。法的レベルで政策、法整備に持っていけるような成果を出したい」と意気込みを表した。
 最後に一行は、コロニアへ協力を呼びかけ、歴史的文献があれば研究資料収集のために提供して欲しいと話している。
 連絡は根川氏(電話=61・3307・1137、メール=sachion02@yahoo.co.jp)まで。