ニッケイ新聞 2009年8月15日付け
英誌「エコノミスト」は十三日、「民主主義と君主主義を混同するルーラ大統領」と銘打って絶賛と酷評を織り交ぜた特集を刊行と十四日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙が報じた。オバマ米大統領から「傑作な男」と評されたルーラ大統領は今こそ、民主主義をとるか、人道主義を売り物に君主主義者側につくのかを決断するべき時だという。至るところに顔を出すルーラ外交は、もっと旗色を鮮明にする必要があるということだ。二〇一〇年一月に国連安保理事国に入れば、イランに対する態度決定なども迫られると同誌は提言をした。
ルーラ大統領の親友は、一体誰か。どっち就かずの八方美人外交は、行き詰まる。国際社会のおけるブラジルの重要性は、特記に値する。金融危機では最後に突入し、最初に抜け出した。まさに自由貿易の旗手として打ってつけといえる。
しかし、その一方、ブラジルは本当の友人を他人に選ばせるのかと同誌が疑問を呈する。例えば、ブラジルが国連安保理事国に入れば、いつかは、イランへの経済制裁強化に賛同するか否かも問われることになる。
ブラジル外交は、世界平和を目指すらしい。ボリビア・ガスの価格交渉で、それを見せた。ブラジルは貧乏国に対し報復措置は取らないと宣言し、ペトロブラスの契約書の破棄を呑んだ。
さらにパラグアイとは、三倍の電気料金を払うことで合意し、お人よし振りを見せた。国際外交も、こんな調子で行くと思っているのかと同誌は疑問を呈した。
ルーラ大統領が軍政下で労働運動に挺身できたのは、フィデル・カストロ首相の薫陶によるものとゴマをすった。しかし、ブラジルが南米の警察官として振舞わないように、皆が願っていると同誌が揶揄した。
キトーのウナスール(南米同盟)会議は、親睦会のはずなのに仇同士の集まりだと、ルーラ大統領が悲嘆した。それは、超国家主義者マルコ・A・ガルシア氏を大統領顧問に起用したからだと同誌は忠告した。
大統領は七月、リビアにカダフィ大佐を訪ねた。またブラジルとは肌が異なるスーダンのオマール・アルバシヂにも接した。人権団体は国連で、ブラジルを中国やキューバなど国民抑圧国家の追随者と訴えた。
同誌は、イラン大統領選の直後、アハマディネジャド大統領に当選を祝し賛辞を送ったことでもルーラ大統領を批判。選挙で不正が発覚したに関らず、野党の抗議を「負け犬の遠吠え」と評したことに抗議している。
また、米コロンビア軍事同盟がベネズエラやアマゾンへの脅威になると考えるのは、精神異常者だけと同誌は見ている。
南米の安全保障については、ブラジルが地域冷戦回避のための役割を果たすには、民主主義と君主主義を混同しないことが大切だという。