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ロージェル医師遂に逮捕=患者から56件もの告発受け=不妊治療の現場悪用し暴行

ニッケイ新聞 2009年8月19日付け

 二〇〇八年四月から患者や職員からの告発が続いていたロージェル・アブデウマッシ医師が婦女暴行の訴えを受け、十七日午後、サンパウロ市南部の診療所で逮捕されたと十八日付伯字紙が報じた。
 不妊治療の第一人者として知られる同医師は六五歳。一九八九年創設の診療所はラ米最大の不妊治療の場といわれ、同医師の治療で生まれた子供の数は七五〇〇人超。中には、サッカーの王ペレや、〃ショー・ド・トン〃で知られるトン・カヴァウカンチなど、著名人の子供にも、彼の手を経て出産に至ったケースがある。
 同医師逮捕に至った婦女暴行の訴えは、〇八年に元職員が無理やりキスしてきたと訴えたことなどがきっかけ。今年一月に新聞で報道された後は、六〇人以上の女性が訴えを起こした。
 大半は一九九五年から二〇〇八年にかけての犯行というが、中には一九七〇年代で時効となったものもあり、検察局は最終的に、未遂も含め五六件の告発を行った。
 訴えた側の女性は、不妊という悩みを利用した形で加えられた苦しみに傷ついた人々。暴行を受けたことを主人や子供に知られることを恐れて、苦悶の日々を送っていたという人も多く、同医師弁護士の「証拠もない訴え」との言葉に、家族もいる女性が、名前まで出して訴えることがどれほど大きな戦いかと反発。この状況で偽りを言うはずはないと訴えている。
 一方、通常の不妊治療以上の成功率を上げている同医師については、性的暴行以外にも、司法の場で取り上げられる可能性のある問題が二つ。
 一つは、受精作業時により若い女性の遺伝子を注入したり、夫婦が知らない男性の精子を利用したりという、遺伝子操作などの問題で、もう一つは、生まれて来る子供の性別操作の問題だ。
 医師としての知識や技術は一品でも、己の技術や名声に溺れ、人としてのモラルや医師の倫理を忘れたロージェル医師。
 血液検査に至るまで自らの診療所内で扱い、治療費は最低一万五〇〇〇レアルという白亜の館での捕物劇。同医師逮捕を報ずるテレビニュースでは、暴行を受けた女性達の告発の声も連続して流されていた。