ニッケイ新聞 2009年8月19日付け
外務省のデータによれば、在外邦人の数は約百八万人、有権者数は八十一万人。そのうち選挙人登録をしているのは約十一万人と約一三%に過ぎない。しかし、サンパウロ管内の登録者数は一万人強とその一割。「世界最大の票田」といわれる所以だ▼今日十九日から在外選挙が始まる(公館投票は二十二日まで)。サンパウロでは文協ビル、そのほかは公館が投票所だ。今回から比例区選挙だけでなく、全国三百の小選挙区の投票が可能。かつては遠かったおらが村の代表に地球の反対側から一票を投じることができる▼〇七年の参院選では、比例、選挙区ともに前回(〇五年)を下回る結果となった。サンパウロ管内で二千人を切り、ブラジル全体でも二千五百人に届かなかった。在外選挙が始まった当時、ブラジルに注目していた日本の各党も、この結果を受けてか、明らかにトーンダウンした。今回の選挙はどうか▼ブラジル国内の登録者の多くが、NHKの視聴者だろう。麻生太郎首相の舌禍、自民党の支持率激減、コロニアで人気の高い小泉純一郎元首相の「政権交代あってもいい」の発言もある。小選挙区への投票可能もあって、投票所に足を運ぶ人も増えるのではないか▼「棄民かと嘆きし父の仏壇に在外選挙の登録証をそなう」。戦前に渡った準二世が詠んだ歌だ。酒場でオダを上げる〃憂国の士〃は多いが、日本人としての義務とアイデンティティを問い直す機会でもある▼ブラジルの存在感を示すことが、日本とコロニアの関係を繋ぐことにもなろう。選挙人登録の煩雑さ、遠い投票所、数が出ない郵便投票などの問題はあるが、さてどうなるか。 (剛)