ニッケイ新聞 2009年8月20日付け
第四十五回衆議院議員総選挙が日本の十八日に公示されたのを受けて、ブラジルでも在外選挙が始まった。国外在住の有権者にとっては、七度目の在外選挙となる。ブラジル国内での公館投票は十九日午前九時半から始まり、地球の反対側から母国への思いを込めた一票を送った。
在外選挙人名簿登録者数一万二千七百人を数えるサンパウロ総領事館管内の投票所となったブラジル日本文化福祉協会ビル(リベルダーデ区サンジョアキン街381)展示室前では、開始時間前から二十人程がパスポートと在外選挙認証を片手に待つ姿が見られた。
文協ビルが在外公館投票の会場となるのは、〇七年の参院選以来二度目。総領事館は百三十人体制で今回の投票に臨んだ。新型インフルエンザの影響を考慮し、会場の入口には手指の消毒用のアルコールが備え付けられた。
一番乗りは、午前八時に来たというサンパウロ市在住の菅野(すがの)ハルエさん(82、二世)。「政治のことは分からない」と言いながらも、「毎回来ているから」と言葉少なに静かに待っていた。
投票開始の九時半になると、有権者は順番に会場の体育館内に入場し、書類の確認を経て、受付で詳しい説明を受けた。その後、領事館の職員と共に投票記載台に進み、一票を投じた。
投票開始前に、同領事館の松代俊則領事に話を聞くと、「本籍の確認などで、選挙人登録に時間が掛かる有権者はいたようです」と述べ、更に「(会場の準備など)領事館としては必要な準備はしてきました」と語った。初日ということで混雑も予想されたが、午前中は比較的スムーズに進んでいた。
今回、二回目の在外投票だという男性(サンパウロ市、72、愛知)は「十七歳でブラジルに来たので、日本の国政に興味を持っている。昔と今は時代が違うので、何も言えないが、祖国は繁栄して欲しい。国民が住みやすく、楽しい国になって欲しい」という。『ばかやろう解散』をした吉田茂元首相を例に挙げ、「みんなに袋叩きにあってもよいので、政治家は一つの信念を持ってやってもらいたい」と語った。
また、今回四回目の在外投票だという塚田千鶴子さん(79、神奈川、スザノ市在住)は「日本社会は、テレビや新聞で報じられている面と、実際では違いがありそうで、違和感がある」と述べ、「平和な国、日本と言っても、自分の国だけでは立っていられない。他国と粘り強く折衝して、外国にも積極的に援助などを行って欲しい」と語った。
公館投票は二十二日まで実施される。時間は午前九時半から午後五時。詳細は在聖総領事館(11・3254・0100)または各在外公館まで。