ニッケイ新聞 2009年8月26日付け
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)の八月度定例昼食会が十四日、サンパウロ市のインターコンチネンタル・ホテルで行なわれ、今月は大手放送企業バンデイランテス・グループ(Grupo Bandeirantes de Comunicacao)のジョアン・カルロス・サアジ社長が「ブラジルの大規模メディアから見た日伯関係」をテーマに講演した。
約九十人が出席。大部一秋在聖総領事や、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)貿易国際関係理事のジョセ・アウグスト・コレア氏なども訪れた。
七十二年前にラジオ放送局として創業したBANDグループは、一九六七年にテレビ放送を開始。サアジ社長は「厳しい時代もあった」と振り返りながら、地上放送で全伯三千二百都市をカバーするまでに成長した同社の歴史を振り返った。
同グループは近年メディア事業の多様化を進め、現在では有料テレビ、ニュース・スポーツなどの専門放送、インターネットメディアなど、幅広く放送・通信事業を展開する。さらに日伯方式の地上デジタル放送や、世界各国で発行される無料紙「ジョルナル・メトロ」、またサンパウロ市地下鉄内の情報モニター事業なども手がける。
有料テレビは二百三十万人が視聴。また、日本のNHK、英国のBBCなど他国メディアとも提携関係を結んでいる。
続いて日系社会について、「ブラジルで信頼され、絶対的な立場がある」として、野菜をはじめとするブラジル人の食生活改善への功績に加え、不毛の地とされたセラード開発を挙げ「ブラジルの地方を決定的に変えた」と述べた。
一方で、自己宣伝しない日本人の性質から「そのすばらしい成果が知られていない」と指摘し、通信・コミュニケーションの重要性に言及。ブラジルは「カーニバルや殺人」、日本は「新商品や台風」といった一面的なイメージを改善するため、〇六年に訪日した際に小泉純一郎首相(当時)と面会、その後のNHKとの提携へ至った経緯を振り返った。
百五十万といわれる日系人の存在については、「ブラジルには百五十万本の日本の苗が育ち、実をつけている。日系社会という大木は他の国にはないもの」とその大きさを表わす。さらに現在、初期移住先駆者、企業進出に続き、民間主体の「第三の波」が来ているとの見方を示し、戦略的パートナーとしての日伯関係の重要性を強調した。
この日はまた、放送企業のイマージェンス・ド・ジャポン社(代表=奥原マリオ純)が新会員として商議所に入会。奥原代表はあいさつで、文化交流に尽力した父親の奥原マリオ氏に触れ、「父の遺志を継いで日伯の架け橋になれるようやっていきたい」と述べた。
そのほか、サンパウロ新聞新社長の鈴木雅夫氏が就任あいさつを行なった。