ニッケイ新聞 2009年8月28日付け
ルーラ大統領は二十六日、マンテガ財務相にリーナ前長官との対決を避けて、国税庁の正常化に専心するよう叱責と二十七日付けフォーリャ紙が報じた。国税庁のリーナ前長官につながる高官粛清は、まだ続いている。財務相が後任の人選も行わず前長官を更迭したため、国税庁に組織の真空地帯をつくり、前長官の人脈が政策の虚に乗じたと大統領は見ている。カルタショ新長官は人事政策で、前長官派と非主流派の均衡に心を砕いているが、それほどの政治力はないようだ。
大統領は財務相の言動があがきになり、ひび割れを大きくしているという。前長官は税収増のために大企業の税務監査を主張、ペトロブラスやサルネイ一族経営企業への行政介入が更迭の理由になったと声明を発表。
マンテガ財務相は前長官発言を全面否定し、国税庁内の不満分子粛清により機能は正常化しつつあるという。しかし、国税庁の緊張は深刻化しているようだ。二十六日は、さらに全国で三十九人が辞意を表明。
カルタショ新長官は前長官に引き立てられた人物だから、野党も納得するような人事を仕切れると期待して政府は任命した。しかし、ペトロブラスCPI(議会調査委員会)に召喚された同長官の粉飾決算を看過するような証言は、国税庁内の緊張を煽ったようだ。
国税庁は二十七日までの四日間に、前長官の息のかかった高官十三人を更迭した一方、サンパウロ州の監査官三十一人始め、南リオ・グランデ州でも辞意表明が続出。更迭や左遷はまだ続きそうで、大統領は財務相に国税庁人事不手際で責任を取らせる考えのようだ。
国税庁は、多くの局が新しい局長を迎える。部下は仕事の能率を落さないで、新局長の嗜好に早く慣れる必要がある。管理職の人事異動で大手術を行ったが、税収を落ち込ませ財政政策に支障を来してはならない。
景気は四月から回復というが、税収は目に見えて落ち込んでいる。税収挽回というが、財務相命令は言うこととすることが違う。税収を上げるには大企業を狙うことだが、政治力がある相手は避ける。それを間違えると命取りになることを今度の事件が教えている。
財務相命令の矛盾は、官房長官と前長官の個人会合で指令されたことを証明するはずであったが、官房長官は事実を否定し、大統領府は証拠を改ざんしたようだ。
一方、Ipea(応用経済研究所)は二十六日、今年上半期の税収が昨年同期比で二百六十五億レアル落ち込んだのは、国際的不況と景気刺激のための減税政策の結果という。それを挽回しようと採った前長官の方針が、政府方針とかみ合わなかったのだ。