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サンパウロ市でまたもバス焼討ち=地域青年の死への抗議行為=学童200人は3時間学校内に

ニッケイ新聞 2009年8月28日付け

 サンパウロ市北部ジャサナン地区のジャルジン・フィーリョス・ダ・テーラで二十六日夜、バス三台の焼討ち事件が発生した。
 二十七日付伯字紙によると、朝のテレビニュースでも報じられた事件発端は、同日一七時三〇分頃起きた地域青年の死。
 麻薬密売の疑いで警官に囲まれた二人の青年の内、三二口径の拳銃を手にした一人が軍警に発砲したため、応戦した軍警の弾を受けたものだ。
 これを知って腹を立てたファヴェーラ青年五人が覆面姿で最初のバスを襲ったのは一八時三〇分頃。乗客を無理やり降ろして火を放った青年達は、その後もバス二台を焼き、もう一台に投石。延焼したトラックや乗用車もあったようだ。
 通報で駈けつけた警官隊には銃撃も加えられ、特殊部隊も出動。ヘリコプターが上空を飛ぶ同地区は、タイヤなどでバリケードが築かれる一方、催涙ガス弾投下やゴム弾射撃も行われ、市街戦の様相を呈した。
 一方、いつもサッカーをして遊んでおり麻薬密売には関わってなかったと住民が証言する青年の死と、降って湧いたように起きた暴動で、戸惑ったのは地域の住民だ。
 抗議行動に加わった住民数は一五〇人に及び、警官隊に対する銃撃や投石、タイヤや木材への放火などを繰返す中、仕事帰りの住民らが現場立入りを阻止された他、帰宅時の学童約二〇〇人が、学校に三時間も留め置かれるという事態も発生。
 二一時三〇分過ぎに沈静化するまで待たされた住民達は通りに残る催涙ガスで目をしばたかせながらやっと帰宅。子供の安否が判らず気を揉んでいた保護者達も、無事な姿にホッとしながら小走りで家路に着いた。
 襲われたバス乗客の中には、自宅に帰る勇気を無くし、同地区の友人の家に泊めてもらった子連れの婦人も居たという。
 二月にサンパウロ市南部のパライゾポリスで起きた暴動など、地域での警官の活動や犯罪者ではない住民の死への抗議行動多発の背景には、麻薬が各所で流通し銃も簡単に手に入るという社会構造や、それらを生み出す社会格差も。警官による死者の多さなど、様々な問題が重なって起きる暴動事件。治安を確保し、一般市民や警官の死も防ぐ方法はないものか。