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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年8月28日付け

 歴戦の戦友が倒れたような悲しい連絡が入った。「日米タイムズ(岡田幹夫社長)は九月十日付を最後に廃刊します」とのあいさつ文を、他人事ではない切実さをもって読んだ。同紙は米国加州サンフランシスコ市に終戦直後の一九四六年に創刊された。一九〇三年の羅府新報(ロサンゼルス)に次いで古い邦字紙として知られる▼『ウィキペディア(Wikipedia)』などによれば、一八九九年に創立した日米新聞が前身とされ、一九四二年の真珠湾攻撃を機に、米国政府が日系米国人の強制収容を行い、同社は閉鎖された。それ引き継いだのが日米時事新聞社(英語名=日米タイムズ)だという▼日本と直接戦争した米国だけに、ララ物資運動を積極的に報道するなど、祖国を思う移民社会の声を代弁する大きな使命を果たしてきた▼同タイムズの財政悪化は、昨年の金融危機のはるか以前から始まっていた。後続移民の減少、インターネット普及による需要の減少などにより読者が減りつづけ、〇六年には大幅な紙面刷新をして日英二カ国語の日刊紙から、日本語版を切り離して週三回にし、英語版を週刊とした。購読料を引き下げるなどの努力をしたにも関わらず、この三年間収入は減りつづけ取締役会が解散を決定するに至った▼九月十日に最終号を発行し、株式会社から日米財団に組織変えし、改めて創刊号を発行する意向だという。ただし、再創刊しても「日本語版を継続するかどうか分からない」という▼この二十年余りで少なくとも六紙の灯火が消えた。ブラジルでは二紙になったがまだ健在。他山の石としたい。(深)