ニッケイ新聞 2009年9月11日付け
【パラー州ベレン発】入植八十周年を迎えるアマゾン移民発祥の地トメアスーの日系二世から、このたび、学長が誕生した。三四年八月、あふりか丸で渡伯した、故沼沢谷蔵氏(山形出身)の子息三男、沼沢末雄教授がその人だ。記念すべき節目のタイミングで、日本移民の貢献の大きい農業分野で、アマゾニア連邦農牧大学(UFRA)の学長に日系人が就任したその意義は大きい。
八月七日午前十時より、アマゾニア連邦農牧大学キャンパス中央講堂(ウアウヂール・ボウニジ)で、約二千人の参加者を迎え、新学長の就任式が挙行された。会場は立錐の余地もないほどの賑わい。中央講堂入口玄関には、モニターを設置し、会場に入れなかった学生や一般参加者に就任式の模様を放映するなど、対応に迫られていた。
政府関係要人、在ベレン名井良三総領事、楠彰首席領事、パラー商工会議所神園良生副会頭夫妻、須藤忠志汎アマゾニア日伯協会第一副会長らやその他日系人の列席のもと、就任式は古式に基づいて行われた。なかでも、沼沢教授の妻カルメンさんと令嬢カミーラさんの姿はひときわ目立っていた。
新学長に就任した沼沢末雄教授は、パラー農業大学(FCAP)農業技術学部を卒業、農業技術者となり、国立パラナ大学(UFPR)農業技術学部ポストマスター大学院終了。二〇〇〇年には、フランスのコンピエーニュ工科大学(UTC/FR)で、エンジニアリング課程の工学博士号を取得。七七年よりアマゾニア連邦農牧大学で、森林工学コースの教鞭を執り、〇五年より同大学の副学長に就任。今回、学長となった。
就任式典では、マルコ・レイチ・ヌーネス前学長が挨拶に立ち、「過去四年副学長として私に協力してくれたことを感謝します。彼なら必ず同大学をつつがなく運営してくれるものと確信しています」と、沼沢教授のこれまでの業績をたたえた。
一方、新学長に就任した沼沢教授は、「今日、我々は、我々の肩に重くのしかかっている大きな責任を感じそれを認識しています。当大学のさらなる発展と勝利を目指して、あらゆる努力を惜しまないでやっていく所存であります。他の大学と比較しても当大学は歴史が浅いです。だからこそ、地域の将来のために、確固たる地位を備え得る大学となるよう、これからその運営に邁進することを誓います」と抱負を述べた。(下小薗昭仁通信員)