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バチスチ容疑者=法相対最高裁へ飛び火=政府見解を訴える=起案判事の作為誘導糾弾=伊政府の恫喝はどうなる

ニッケイ新聞 2009年9月12日付け

 ジェンロ法相は十日、亡命を申請したケーザル・バチスチ容疑者の身柄引渡しで、最高裁が危険な前例を開設しつつあると批判したことを十一日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙が報じた。同件の最終判決は延期されたが、法相は最高裁が越権行為を犯していると非難。起案担当のセーザル・ペルーゾ判事は個人的見解に立ち、同審理を作為的に誘導したと法相は訴えた。一方、最高裁のメンデス長官は同日、法相自身が国家亡命審議会(Conare)で同容疑者の亡命容認を否認した経緯があることを指摘した。

 バチスチ容疑者は政治亡命者か、ただの人殺しかを巡って法相と最高裁長官の対決に発展したようだ。法相はルーラ大統領の諒解を得て同容疑者の亡命を容認したことがあり、最高裁判決はそれをひっくり返しつつあるようだ。
 チリ訪問中のジェンロ法相は、テレビ会見でペルーゾ最高裁判事の起案弁論が個人的見解に立脚し、他の判事を同容疑者の身柄引渡しへ誘導する作為的なものであると糾弾した。同判事は、法相の亡命容認が違法行為であるというのだ。
 法相によれば同容疑者は往年、イタリアでプロレタリア運動(PAC)の武装組織で活動、官憲の追跡を逃れてブラジルへ亡命。連邦警察が身柄を違法拘束したという。
 法相の亡命容認は、ブラジルの伝統と国家的見地に立ったと弁明。最高裁判事の中には、法相判断を理解する者もいるという。法相は、自分の判断は大統領府の見解を考慮し、一目置くべき政権の要のようなものと強調した。
 同容疑者が断罪された当時のイタリアは、独裁政権下にあり欺瞞の政治が罷り通っていた。そのような条件下の亡命という法相見解を、ペルーゾ判事が全く無視し、私見を展開したという。
 最高裁は三権の均衡に配慮すべきで、独断専行は許されないと法相が糾弾。最高裁判断が、立法や行政の判断に優るような思い上がりは慎むべきだと訴えた。
 イタリア政府からブラジル政府に対し、国際司法裁への提訴や伊サミットからのルーラ締め出しなど国辱的な恫喝圧力があった。このような横柄な態度に、ブラジルは断じて屈すべきではないと法相は考えている。
 最高裁のメンデス長官は同日、法相批判に対し「最高裁の越権行為も三権への独断専行もない」と否定した。法務省配下のConareが亡命否認を決議し、ルイス・テーレス法務次官が署名した経緯がある。ブラジルは文化国家であり、三権の確執はなかったし、これからもないと同長官が反論した。