ニッケイ新聞 2009年9月15日付け
リーマン・ブラザース投資銀行の破綻で火蓋を切った世界恐慌が十五日に一年を迎え、ブラジル経済に一対の影響を残したと十三日付けヴァロール紙が報じた。それは、消費市場や個人ローン、実質所得などが金融危機以前の水準へ戻る一方で、工業生産やエネルギー消費、企業金融などのように失地回復の目処が立たない業界も出ている点だ。正規雇用の労働市場は、危機以前より十九万六千人減少。それなのに自動車市場は、不況対策のお陰で好調。八月は危機以前水準の一万三千三百台を売った。消費市場は六月、昨年九月の二・六%増。平均実質所得は三・四%増であった。
一年の傷跡を追うと、輸出は食糧と一次産品を除いて後退を余儀なくされた。またブラジルの輸出市場を、中国に奪われた感がある。輸出の落ち込みには特徴があり、これからの産業のあり方の変化を暗示している。
クレジットの削減により、消費も世界的に後退。その上、レアル通貨の高騰により国際競争力抑制というオマケがついた。恐慌で意気喪失する世界経済に活気を戻そうと中国が、食糧と一次産品を買い付けた。
この波に乗ったのは、ブラジルとアルゼンチンだけであった。ブラジルが八月までに、過去最大の大豆輸出注文二百五十六億トンの半分を船積みしたが、全て中国向けであった。量では昨年同期比で二七・六%増。価格は一〇%値切られた。
鉄鉱石輸出でもブラジルはトップを走り、中国で先んじ他を制している。砂糖は昨年ベストテン入りできなかったが、今年は世界四位に顔を出している。輸出量では、六〇・二%増。価格は、一四・五%増。アジアでサトウキビの凶作があったからだ。
食糧と一次産品による大量輸出の反面、レアル高騰と実質所得の向上で輸入品も音を立てて入ってきた。目だつのはローンを要しない乳製品や洋酒、缶詰、服飾衣料品、香水、化粧品などが倍増、国内メーカーの脅威となっている。
耐久消費財輸入は昨年と同程度だが、急増の傾向がある。外車輸入は八月、四億九千九百万ドルにつけ、昨年一年間の四億八千二百万ドルを突破した。レアル高と所得向上が、外車の購入に拍車をかけているようだ。