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後手後手の国内水害対策=事後処理偏重で予防策手薄=防災費は救援費の15分の1

ニッケイ新聞 2009年9月16日付け

 八日に南伯や南東伯を襲った風水害の記憶がまだ新しく、十六、七日の南伯は悪天候との予報も出る中、ブラジルの水害対策は事後処理偏重で予防策が手薄と十五日付エスタード紙が報じた。
 同紙によると、道路や橋の修復、被害者救援、家屋建築など、災害の事後対策での国家支出は、八億九二〇万レアルの予算プラス二億一三八〇万レアル。一方、予防対策支出は約一五分の一の七一二〇万レアル。中には、防災庁の気候変動防止策や全国危機災害管理センター施設費、危険地域住民へのオリエンテーション費用など、支出ゼロの項目もある。
 防災対策費の消化率は高いが、災害被害者支援には多大な金を投じても、防災費には殆ど支出していないと、専門家が懸念する所以だ。
 この状況は自治体レベルでも変わらず、八日の水害後、サンパウロ市の防水池建設費支出は七%のみと十日付フォーリャ紙、危険地域の分析は〇三年から行われていないと十一日付同紙など、防災対策不備指摘の記事が連続。
 また、〇八年から今年にかけて大水害が出たサンタカタリーナ州では、八日の竜巻後も、洪水などの被害が継続。
 南大河州でも、ポルト・アレグレ一帯で浸水などの被害を受けた住民が、留守宅の盗難被害を恐れて避難所に移りたがらないなどの報道があるが、これらの報道も、南伯の復興も事後対策中心であった事の表れだ。
 水害発生の背景には、例年以上の雨が短時間に降るなどの自然要因に、山腹や河岸の樹木伐採、危険地域への住宅建設にアスファルト化といった市街化問題、地球温暖化進展、防災対策の遅れなどが重なっている。
 また、土砂崩れで親子四人が死亡したサンパウロ州オザスコでは、危険地域住民を強制退去させて住居撤去の強攻策に出たが、一般的に、防災対策は結果が目に見えにくい上、住民の抵抗にあい易く、選挙得票につながり難いと指摘する専門家もいる。
 防災対策を後回しにした結果、風水害や産業活動停止などで、防災費以上の損失や支出を余儀なくされ、避難所暮らしも強いられるという悪循環を断ち切る英断を下すのは為政者か、それとも為政者を選ぶ国民か。

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