ニッケイ新聞 2009年9月22日付け
イチョウのように逞しく―。日系人が多く通った「コレジオ・パウリスターノ」の卒業生らが中心となり、被爆2世のイチョウ苗3本を19日、同校跡地に建つ私立大学FMU(Rua Tagua 150)に植樹した。幹事役の平崎靖之さん(63、広島)は、「イチョウは太古の昔からあり、生命力が強い。リベルダーデ発展の思いも込めた」と嬉しそうな表情を見せた。
コレジオ・パウリスターノはリベルダーデ区タグア街(現在のFMU)にあり、日系人子弟が多く通っていた私立校。七〇年に最後の卒業生を送り出した。
卒業生で、ブラジル被爆者平和協会の斎藤綏子理事(62、広島)は、「日系だけでなく、エジプトやドイツなどポルトガル語のままならない移民の子供が多くいました」と懐かしそうに振り返る。
平崎さんが知人のアデリコ・マチオーリ陸軍少将と話しているうちに、お互い同校出身であることが分かった。
知りあいに呼びかけ、昨年十月にあった初の同窓会には九人が参加。
旧交を温めるなかで、「来年集まる時には、何か意義のあることを」と、胎内被爆者である平崎さんが被爆イチョウを〃古巣〃に植樹することを発案。FMUに打診し、実現した。
今回植樹したイチョウは、宮城県人会の中沢宏一会長(65、アチバイア在住)が育てていたものを寄付した。「十五年ほど前、広島に里帰りした知人の女性がブラジルに持ち帰った被爆イチョウの銀杏をもらい育てた」(中沢会長)という。
十九日午前、FMUには十人の卒業生のほか、日系唯一のサンパウロ州議で、祖父母が広島出身の西本エリオ氏(46)、広島県人会の大西博巳会長、長崎県人会の大河正夫副会長(58)、FMU関係者が集まった。
南米大神宮の逢坂和男宮司が神事を執り行い、三本の苗をタグア街に面した入り口の庭に植樹した。
FMUの環境教育担当クリス・アラウジョさん(37)は、「このような機会を嬉しく思う。心の中にイチョウのような強さと耐える力を持つことを生徒たちに伝えたい」と感謝の言葉を述べていた。