ニッケイ新聞 2009年9月24日付け
危機に瀕した時こそ、周りがよく見えるものだとつくづく思う。心配して再建策を考えてメールを送ってくれる駐在員もいれば、わざわざ日本から協力を申し出てくれる人までいる。邦字紙はただの企業ではなく、コロニアのために損得抜きで存続すべき役割を担っていることをしみじみ感じる▼しかるにサンパウロ新聞が23日付けコラム「灯台」の締めで、弊社が一部地域の配達を週3回にすることに関して、「新聞が持つ基本的な使命を放棄したことは戦線離脱したことになる」などといいかげんなことを書いているのが、まったく残念だ。一見同情するフリをして、相手の危機に乗じて現実以上におとしめようとする、同紙〃一流〃の書き口だ▼だいたい弊紙もサ紙も郵送の読者に関してはもともと即日配達ではない。しかも、弊紙はサンパウロ市などの地域の即日配達は続けるよう調整中だし、インターネット配信も通常通り▼にも関わらず「新聞の使命を放棄した」だの「戦線離脱した」だのと勝手に断じて、あたかもそれが「方向転換」の既成事実であるかのように語る論調は、詭弁に他ならない。同業者だけに正確を期してもらいたい▼弊紙はむしろ、04年に内山勝男編集主幹が亡くなった折や、創刊50周年式典の時にも、サ紙が果たしてきた役割の重要性を客観的にとらえ、利害関係を超えて積極的に報道してきていることをお忘れのようだ▼弊紙の配達が変わろうとコムニダーデに果たす役割は何ら変わるものではない。どんな独断を展開する(下)編になるか知らないが、両紙とも取り巻く状況に大差はない。天に唾するようなおためごかしはいかがなものか。 (深)