ニッケイ新聞 2009年9月30日付け
OAS(米州機構)のレヴィス・アムセレン米国代表は28日、ホンジュラスから追放されたセラヤ大統領を客分として伯大使館に迎えたブラジル政府と帰国決行を唆したベネズエラ政府を紛争の責任者として批判と29日付けエスタード紙が報じた。アモリン外相は28日、クリントン米国務長官にアムセレン発言を抗議した。アムセレン代表は、さらに「セラヤ大統領のまえもって了解のない行動は愚かで無責任。前時代の映画物語を地で行く幼稚な振る舞いは慎むべきだ」と糾弾した。
オバマ米大統領は初めから、臨時政権と交渉の上での帰国を要求していた。そのためにコスタリカのアリアス大統領が、仲裁役に立てられた。同大統領案は、セラヤ大統領の復権が前提であった。しかし、11月の総選挙が近いため、焦りがあったようだ。
セラヤ大統領の伯大使館寄留から、協調していた伯米間にきしみが生じた。そこへ伯政府が国連安保理へ伯大使館の安全確保要請書を提出し、米政府は晴天のへきれきの思いであったようだ。
国連のスーザン・ライス米代表は、伯政府の行動に不満の意を表した。いままでホンジュラス問題を共同歩調で対処してきたのに、突然なぜ国連安保理なのかと。
国際問題担当のマルコ・A・ガルシア顧問は28日、米国外交特有の逃げ道を用意した不明瞭な発言だと評した。しかし、国内でも政府の外交姿勢に批判が続出。
セーラサンパウロ州知事は、ホンジュラスを甘く見たのだと批評。一度口を出したのだから、恥じをかかずに引き込むことだという。セラヤは大使館を舞台に政治活動を始めたのだから、亡命ではない。
サルネイ上院議長は、セラヤが外交関係を政治活動へ利用するなら、大使館に留めるべきでないと叱責。それを看過したら、内政干渉といわれる。これはチャベスに乗せられたか、顔を売ろうとして裏目に出たかのどちらかと見ている。
ジョビン国防相はブラジル外交が拙いことになったが、唯一の解決法は外交によるしかないと述べた。伯大使館保護に軍隊の派遣はない。臨時政権を承認しないから、大使館に外交特権はない。
伯大使館への侵入とセラヤ拘束は外交的には問題を残すが、法的には可能だと国際法の専門家がいう。セラヤが政治活動を開始したことで最早、大使館ではない。ホンジュラスの社会秩序を乱すアジトに見なされるとウィーン協定にある。