ニッケイ新聞 2009年10月2日付け
最近日本から来たデカセギ業界関係者から、在日ブラジル人失業者で、かつて自分を雇っていた派遣会社や元受け日本企業を労働裁判で訴えるものが増えているという話を聞いた。しかも「極左系労働組合が手続きを仲介している」とか。怖いことに「中には示談屋が企業との間に入って話をまとめるケースまである」とも。この示談屋というのは、高額な報酬を目的に被害者の代理として示談にあたる交渉のプロで、いわゆるその道のヤクザなどが関係しているという▼件の関係者は「日本企業は労働争議を極端に嫌う。ブラジルで裁判起こす調子でバンバン日本でやったら、ブラジル人労働者の評判が落ちて、景気が良くなっても仕事はもう回ってこなくなる」と悲観する。さらに「日本の事情がよく分からないまま極左勢力に外国人が利用されている。組合は裁判手数料を稼ぎ、結果的に外国人はその場の金は手にしても、長い目で見て居場所を失う」と警告する▼世界同時不況の影で、外国人、極左、ヤクザという日本社会の陽のあたらない部分が手をつないで不気味な「闇の三角形」を形成しているとすれば悲しい事態だ▼さっそく群馬県や愛知県の事情通に様子を確認したところ、「群馬ではブラジル人の労働裁判はほとんど聞かない。でも愛知では数件聞く」との回答だった。無いわけではないが、激増している訳でもなさそうだ。火のないところに煙は立たないとすれば、素地はあるのかもしれない▼労働裁判でも起こして当然という酷い場合は当然すべきだろうし、それ自体が悪ではない。しかし、ブラジル人全体のイメージを悪化させない節度は必要だろう。 (深)