ニッケイ新聞 2009年10月8日付け
今年も老人週間がリベルダーデの文協ビルで1日に開催され、一日で約800人(主催者発表)が訪れた。援協(森口イナシオ会長)、救済会(吉岡黎明会長)、老ク連(重岡康人会長)、日伯高齢化研究グループ(ゼエニブラ、設楽恵利嘉会長)の共催。記念すべき第40回目の今年のテーマは、「ブラジル日系老人の過去・現在・未来」。老人週間の生みの親、小畑博昭援協元事務局長の講演も行われ、来場者は健康や老後の生き甲斐への意識を高めた。
会場入口のサロンへ足を踏み入れると、古本市、高齢者手製の納豆、弁当などが販売され、賑やかな雰囲気。毎年恒例の無料健康検診は、早朝からUNIFESP(サンパウロ連邦大)の看護士の卵や日伯友好病院、サンタクルース病院の医師・看護士90人がボランティアにあたり、約350人が受けた。
正午すぎから記念式典が行われた。共催団体代表の重岡康人・老ク連会長があいさつに立ち、「最近の日系社会をみると高齢者が増え、問題が生じるのは避けられない」とし、「柔和な心構えが不可欠」と述べた。
来賓の鎌倉由明領事、与儀昭雄県連会長、山下譲二文協副会長の祝辞に続いて、会場にいる最高齢者の男女、井垣セツさん(95、東京都出身)、和田浅五郎さん(95、奈良県出身)に記念品が贈られた。
井垣さんは、「思いがけない贈り物を頂きました」と感謝しきりの様子。サンベルナルド・ド・カンポ在住の和田さんは、「杖さえあればどこへでも行く。今日も一人でオニブスに乗って来ました」と笑顔をみせた。
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午後1時過ぎからは大講堂で、老人週間の生みの親で、66年から30年間援協事務局長として福祉活動に尽くした小畑博昭氏(80、宮城)の基調講演が行われた。テーマ「ブラジル日系老人の過去・現在・未来」に沿って日系老人の古今東西から未来に向けての提案に、約300人が聴講した。
「昔は、今のような娯楽や楽しみのある老後は想像できなかった」。60年代後半になると、子のない老夫婦や孤老の増加、デカセギ家族に置き去りにされる老人、放浪生活の末に身分証明すら持たない老人が出てきたと振り返る。
そんな中、老人問題に対する意識を高めることを目的に老人週間を企画し、「年寄りを何とかしたいという温かい気持ちからスタートし、大成功だった」と懐かしんだ。
だが、その頃から農村離れや核家族化、価値観の変化による利己主義化、混血化などが進む中、「もう一度、日系社会の連帯意識を再構築できないのか」と会場に問いかけた。
さらに日本政府に対して、「老人福祉施設を強化し、専門家を育てるために日本への留学制度を設けて欲しい」などと提案し、講演を締めくくった。