ニッケイ新聞 2009年10月8日付け
300年以上の伝統を持つキッコーマン株式会社が、昨年から本格的にブラジルの醤油市場開拓に乗り出し奮闘中だ。「健康や食の安全性を求める層を中心に『キッコーマンじゃなきゃ駄目』という愛好家の輪が広がりを見せている」と話すブラジル駐在員事務所の森和哉代表(35、福岡、07年に赴任)に話を聞いた。
80年代後半から10年弱、東山農場で製造していたキッコーマン。現地生産を引揚げてからは輸入のみとなった。
シンガポール工場からの輸入開始は01年、日本からは08年、と本格的に乗り出したのはごく最近のこと。
トウモロコシやフェイジョンが原料の、真っ黒なものが主流のブラジルの醤油に対し、「味や香り、色が違う。その上、使い方も異なる」と森代表は指摘する。
「醤油に魚を泳がせる」ような使い方が普及しているブラジルへの再参入――。
「中途半端に高価なものではなく、トップのものだったら勝負できる」と目をつけた。
今年6月の「県連日本祭り」で本格的に販売を開始。今年4月に試験的に輸入し始めたばかりの「特選丸大豆減塩醤油(プレミアム)」(1リットル25レアル)など4種を売り込み、「予想の3倍の300本が売れた」と手応えを話す。
赴任した年は、調査に時間を費やしつつも、〃安心安全を求めるお客さん〃をターゲットに、和食レストランやホテルを中心に地道に売り込んだ。
「保存料や添加物が入っていなくて美味しい物を求めている人はいる。現在は注文を受けても在庫がない状態です」との嬉しい悲鳴も。
入社して12年、営業一筋の森さんは、「醤油はワインや酒と一緒のものだと考えて欲しい。同じ醸造で奥が深く、醤油もいろいろ。ぜひ比べてみて欲しい」と力を込める。
「食べ歩きも仕事」というだけあって、研究熱心だ。いつも携帯醤油(100ミリリットルボトル)を持ち歩き、どんな料理にも一度は醤油を垂らしてみるという。
「油ご飯とファロッファの上に垂らす」のが個人的なお勧めだとか。
「醤油が好き。キッコーマンだけにこだわらず、醤油の価値をあげるために違いを広めていきたい」と話し、「ゆくゆくは、もう一度こっちで製造したいです」とさらなる抱負を語った。