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来年4月から社保加入義務化=在日ブラジル人のビザ更新時に=外国人労働者協議会=抗議の陳情書=「定住なら必要」との声も

ニッケイ新聞 2009年10月9日付け

 来年4月から在日ブラジル人がビザを更新する時に、保険証(国民健康保険や厚生年金などの社会保険)の提示が必要になることに関し、外国人労働者問題協議会が反対の署名活動を行い、この条項を削除することを求める陳情書を日伯議連や関係省庁などに手渡すことにしている。というのも、今から加入すると2~3年さかのぼって未納金を払うことになるために、この不況のさなかに場合によっては100万円前後のお金が必要になり、「実質的に外国人排斥では」との主張だ。一方、日本で定住するなら社保に加入した方がいいとの声もあり、議論を深める必要がありそうだ。

 同協議会の本間昭治郎理事が書いた陳情書によれば、「おそらく、数十万人の外国人に影響があるでしょう。この金額は、相当な負担となり日本で生活が困難となり、帰国する者が増える」とする。
 同陳情書によれば、法務省入国管理局入国在留課の法務専門官は「公的保険に加入しなければ、ビザを出さないとは言っていない」としているが、地方入管事務所での実際の対応はそうではないと次の例を出す。「保険加入がないため、従来3年の期間が認められていたにも関わらず、今回は1年のビザしか発給されず、次回の更新までに公的保険の加入を強く求められています」。
 さらに、これが「日本の役所の常套手段で、本省や法律では特段の規制はないが、下に降りるほど規制が強まる、いわば窓口規制の典型ではないでしょうか」と訴える。
 社保加入の義務化によって、企業が日系人を雇用しづらくなり雇用企業が減少し、日系人の手取り給与が30%減になることで、「日系人の日本での生活が困難になり、仕送りも出来なくなる。結果として日系人を日本から排斥することになる」としている。この政策が結果的に意味するところは、「今回の件は外国人に帰国を促(うなが)し、日本国は外国人を排斥しているように受け取れます」と結論する。
 これは外国人の駐在員にも適用されるため、母国で保険に入っている場合は、二重払いになるなどの矛盾を指摘する外国人がサイト(jp.freechoice.jp)を立ち上げている。
 しかし、サンパウロ市内のある派遣会社代表は「定住するなら社会保険に入っていたほうが良い。雇用主側からすれば入っていない方が良いだろうし、派遣会社も使いやすい。でも、デカセギ本人からすれば入っていた方がいいのでは」という。
 特に定住を前提にし、子供の教育などを真剣に考えた場合、直接雇用されて社保に加入した方が生活は安定する。
 ブラジル人の場合、問題は主として派遣社員として働く場合に生じる。「いつまで日本にいるか分からない」という中途半端な将来設計をすること自体が問われるような政策でもあり、ブラジル人本人の決意が問われる状況といえそうだ。