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進まぬ疎水工事の検分に=ルーラ十八番の選挙戦略=旗は振れども動かぬ資金

ニッケイ新聞 2009年10月16日付け

 ルーラ大統領が14日から3日間、次期大統領選候補のジウマ官房長官やシロ・ゴーメス下院議員を同行して、サンフランシスコ川疎水工事の検分旅行を行っている。
 14、15日付伯字紙によると、工事検分のみのはずの旅行は、最初のミナス州ブリチゼイロで早くも選挙キャンペーンの様相を呈した。
 大統領選候補の可能性もある工事反対派のアエシオ・ミナス州知事は、同市対岸のピラポーラ訪問取り消しを知り、旅行同行を中止したが、ブリチゼイロの集会は参加。
 PAC(経済活性化計画)の一つでもある工事だけに、〃PACの母〃ジウマ氏と、同工事実現の功労者ゴーメス氏(06年当時国家統合相)、関係州知事らの同行は説明もつくが、大統領が「サンフランシスコ川疎水工事はブラジルの歴史に残る事業」と自画自賛し、「自分以前の政権はなぜこの工事を行わなかったのか」と言い始めたあたりからは選挙前哨戦。
 とはいえ、両候補の共同戦線はありそうもない大統領選だけに、大統領の口からも「この2人はソロ(独唱者)向き」との言葉も出た。
 一方、バイア州バーラで一行を迎えたのは約1500人のルーラ大統領ファン。ジャッケス・ワグネル同州知事と、知事選出馬予定のジェデウ・ヴィエイラ・リーマ国家統合相の歓迎幕はあったが、ジウマ氏の歓迎幕はゼロ。「大統領の指示に従う」「労働者党候補なら投票する」との言葉がせめてもの慰めだ。
 今回検分の対象となった工事はルーラ政権の目玉の一つで、北東伯民1200万人を水不足から救うがスローガン。
 ところが、総工費55億レアルで07年着工の同工事は、環境許可や入札企業の事業放棄などで工事中断も続き、バイア~セアラ州間(北路)が13・7%、同ペルナンブッコ州間(東路)が16%と大幅な遅れ。資金供出も、08年が7・31%、09年が3・68%のみだという。
 専門家から見直しを求める声が出ている同工事や、完成後は世界3位の規模となるが環境許可問題などを抱えたベロ・モンテ水力発電所など、大型工事を打ち出してきた現政権の後継者には、これら工事のつけが重くのしかかる可能性もある。