ニッケイ新聞 2009年10月21日付け
原口一博総務相は中日新聞の取材に応えて、日系ブラジル人ら新来定住外国人の医療、教育、福祉などの公共サービスを保障するような基本法である「多文化共生推進法」(仮称)の制定を検討していることを明らかにし、「静岡はモデルになる」(同紙19日付け)とのべている▼民主党が推薦した川勝平太知事が静岡ということも関係あるだろうが、ブラジル人最多県の愛知よりこちらでとの背景には、日本人住民との問題への様々な先進的な対策が講じられている事情もあるだろう。今までは、国が法律で対応するのでなく、地方自治体レベルで対処療法的な政策に終始してきた感が強い▼01年に浜松市で行われた第1回外国人集住都市会議で採択された「浜松宣言」についても原口総務相は言及しているが、それに対応してもう一つの宣言が当地で出されたことはあまり知られていない。北脇保之浜松市長(当時)自らが参加しての日伯両政府へのデカセギ問題に関する要望事項をまとめた「サンパウロ宣言」(02年8月)だ▼原口総務相が新来定住外国人への公的支援に関心を持つなら、彼らがどんなところから来たかを知ることは無駄になるまい。多文化共生の道を探ることは、一国内の文化や常識で物事がうまくまとまらない状況、つまり多文化な状況の中で在住外国人みなが合意できる生活方法を探すことではないか。ならば日系人がブラジルでどう扱われているかを見ることも参考になる▼ブラジルに「共生法」はないが生活の実態はある。デカセギの歴史が20年なら、日本移民は100年ある。ぜひとも法案作成者には〃先進地〃を視察に来て欲しい。(深)