ニッケイ新聞 2009年10月24日付け
【既報関連】ルーラ大統領は22日、外資課税が妥当であるか否かの判断で年末まで様子を見るよう指示したことを23日付けエスタード紙が報じた。IOF(金融税)2%課税の初日、13億レアルがブラジルから持ち出された。ボベスパ(サンパウロ市証券取引所)のエデミル・ピント会頭は、財務相に株式公開に対するIOFの見直しを求めたが、拒否された。ジョルジ産業開発相がIOFは自殺行為だと批判したことで、財務相は銀行を除く全業界から支援されたIOFであると反論した。
「同措置がなければ、ドルは直ちに1・70レアルを切る事態にある。目的は通貨の暴騰、暴落を避けるのが目的」と財務相が釈明した。政府は1・70レアルの線を死守する意向のようだ。
問題は、国際金融がブラジルを「通貨の安全地帯」と認識していることで、流入外資に課税する必要があるのかが疑問視されている。財務相は、IOFの是非について結論を出すのは早いと、抗弁に没頭している。
産業開発相は、経済政策が一時しのぎの繰り返しで、一貫した長期政策がないのは遺憾だと表明した。ブラジル製品の国際競争力を確保するのは、外資の抑制管理ではないと同相が述べた。
必要なのは、技術革新や生産性向上のための投資と同相はいう。金融危機によって国際市場は縮小。消費は激減。それを嘆く前に、ブラジル製品は不利な内部事情のため、高価であることを認識すべきだと訴えた。
先ず外資課税の前に、税制改革が必要だ。完成品は工場を出るとき、工業税と流通税、金融税、Cide、サービス税、手数料や金利を払う。
米国では、銀行が融通する運転資金の金利は、年利4%。ブラジルは手形割引が40%、約束手形が53%と桁違い。メーカーが仕入れる原料や部品に、金融コストも支払わされる仕組みだ。
欠陥だらけのインフラで受ける損害は、IOFどころではない。穴だらけの国道で、黒煙を吐いて走る重トラ。傷むタイヤや部品。港湾で長蛇の行列に費やす時間と費用。前時代の港湾設備。
コスト削減のためにある鉄道網は、開店休業状態。大豆輸出に支払われる無駄な負担は、IOFを賄って余りある。政府の政策が、一時凌ぎの積み重ねで成り立っている。国民は官僚のマンネリ勤務に慣れて抗議する気力も失っている。
外資課税の前に、なすべきことを同相が次のように指摘した。「裁判所のダラダラ審理、時代遅れの労働法など、先送りで幾世紀も放置したシステムの見直しを行なってはどうか。ブラジルのアテ・アマニャン方式を近代的生産方式に切り替える時期が到来したのではないか」。