ニッケイ新聞 2009年10月28日付け
12月のコペンハーゲンでの国際環境会議を前に温暖化ガス削減目標設定を迫られているブラジルだが、1990年~2005年の15年間に温暖化ガス排出量は24・6%も増加と26日付フォーリャ紙が報じた。
サンパウロ総合大学のカルロス・セリ教授らの研究によれば、ブラジルのガス排出傾向はここ15年で変化しているという。
1994年の報告以来の報告で、94年からのガス排出量は17%増。森林伐採では8・1%、それ以外の理由でのガス排出量が41%も増えた。先進国の大半や、中国の89%、インドの62%よりは低いが、国際平均の28・1%増に比べれば高い増加率だ。
15年間では、森林伐採によるガス排出10・6%増、発電や交通運輸関係のエネルギー64・7%増、工業89・2%増、農業や牧畜37・7%増となっている。
これらの数字は、ブラジルの工業化や食糧生産国としての発展を反映したもの。それでも、森林伐採によるガス排出は11億3930万トンで、全排出量20億2230万トンの51・9%に上る。
その意味で、12月の会議に森林伐採を2020年までに80%削減との目標を提出することは理にかなっているが、マリーナ・シウヴァ前環境相によれば、これでもまだ不十分だと27日付フォーリャ紙が報道。
15日付本紙既報の様に、ブラジルの温暖化ガス削減目標設定の壁になったのが、環境保護と経済発展のバランス。年4%の経済成長を前提とした環境省の原案を、5~6%の成長を前提に計算し直す様、官房長官が指示したのも、温暖化ガス削減は産業減速につながるとの考えが強いからだ。
27日付エスタード紙には、エネルギー関係のガス排出が53%で、国より早く削減目標を出したサンパウロ州の温暖化ガス削減の鍵は、交通運輸との記述。工業関係の削減努力と共に、公共交通網を整備し、車両走行量を減らすことや植林が課題。
26日付フォーリャ紙には、サンパウロ市の1日の車両走行量は登録数の約3分の1とあったが、市内を走る車の数が減れば渋滞やガス排出量削減につながるだけに、公共交通網整備とその利用も更に促進したいものだ。