ニッケイ新聞 2009年10月29日付け
昨年からの不況で在日ブラジル人社会を取り巻く厳しい状況は、まだまだ続いているようだ。わが身はさておき、広告収入に頼るコミュニティー向け新聞や情報誌が軒並み、廃刊かそれに近い状況に追い込まれている▼中日新聞の報道を関心深く読んだ。このほど県が美濃加茂市で開いた『外国籍県民会議』のなかで、ポ語による県の広報、各市のホームページを「読まない」と回答したブラジル人がそれぞれ57%、76%に上ることがアンケート結果から発表された▼日本人でも行政の広報を読む人は少ないだろうが、この会議は、インフルエンザや災害時の情報提供のあり方がテーマ。日本人なら、他からも入る緊急事態の情報が、言葉に支障のある外国人社会には行き届いていないことをニュースは伝える▼無料情報誌は93%もの人が「読む」と答えたという。しかし、全国版だけに地域に密着したニュースがなく、冒頭にも触れたようにポ語媒体が減っているから、情報源は限られてくる。生活する場所の情報がないことが様々な不利益を生むことは明らかだ▼アンケートを行った定住外国人自立センターの代表は、県や各市の広報を盛り込んだ情報誌の発行やネットと連動する仕組みを提案したとか。この背景には、不正確な噂で行動するブラジル人同胞を憂える声もあるという。何かどこかで聞いた話だ▼よく考えてみると、こういったニュースが日本語の新聞に載るというのは、少なくとも関心を呼ぶ、もしくは呼ぶべきだと考えられているのだろう。ともあれ、多文化共生への環境が整備されていると思いたい。 (剛)