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上院外交委員会=ベネズエラのメルコスル加盟承認=大統領と財界が圧力=準備未完成のまま発車か=政治抜きの経済のみで

ニッケイ新聞 2009年10月31日付け

 上院外交委員会は29日、ベネズエラのメルコスル加盟を承認、上院本会議の審議も見通しが明るいと30日付けエスタード紙が報じた。これはルーラ大統領や同国との通商拡大に関心を抱く財界圧力の成果と見られている。同国のメルコスル加盟が懸念されたのは、チャべス大統領の政治手法と経済システムが、メルコスルの趣旨と異なるためであった。連立与党の上議らは、同国加盟が例外容認になるとして承認をためらっていた。

 上院外交委員会によるベネズエラのメルスル加盟は、同国との通商に意欲を燃やす財界ロビーと後押しをした大統領の勝利といえる。大統領は、今年4回目の同国訪問に土産話ができた。
 べネズエラは、同国消費物資の70%を輸入。ブラジル産品の輸入国では第6番目。ルーラ政権の5年間で対ベネズエラ輸出は758%も増え、6億ドルから51億ドルへ飛躍した。
 同輸出品の72%は、利益が見込まれ多くの雇用を創出する工業製品。ブラジルは現在、隣国との通商で46億ドルの貿易黒字を計上し、対米貿易の18億ドルをはるかに凌駕している。
 メルコスルがベネズエラへ売り込まないなら、同市場は中国に奪われ、ブラジルは後塵を拝することになる。
 伯亜間や伯中通商には既に共通通貨が流通しているが、伯ベネズエラにも共通通貨システムを設定する必要がある。現在はレアルとドル、ドルとボリヴァルで複雑な為替手続きを行なう。その手続きに時間がかかる。
 ベネズエラ加盟に批判的なルーベンス・リクペロWTO(世界貿易機関)元伯大使は、チャべス大統領の関与を経済面にのみ絞り、政治的干渉をさせないよう警告。同国の加盟は、牛の前に自動車を結ぶようなものという。関税協定の順守確認をとらず発車は、無謀だと同元大使が警告。
 中国のWTO加盟には、12年の検討を要した。ロシアの加盟には19年も検討したが、まだ結論が出ない。一国の協定加盟には、義務を設け履行させる必要がある。ベネズエラのような問題国の加盟には、メルコスル加盟各国が個別に2国間協定を締結すべきだと同元大使が忠告。