ニッケイ新聞 2009年11月5日付け
「かけがえのない機会を与えてくれた日本、先人に感謝」――。日本留学・研修が公式に始まり今年で50周年。全OB・OGの集まりであるASEBEX(日本留学生研修員ブラジルOB会、会員数2千以上)は10月31日夕方、サンパウロ市レストランで記念祝賀会を催し、小松ジェニ清香会長は目に涙を浮かべて、そう感謝の言葉を述べた。
日本人移民50周年がきっかけとなり翌1959年、二人の岡山県費留学生が祖国へと渡った。これを皮切りに50年間、多くの日系子弟が国費・県費・JICA・国際交流基金などを通じて日本で留学・研修し、現在各分野で活躍する。
祝賀会には、留学生第1号の栢野定雄氏(ニッポン・カントリー・クラブ元会長、文協副会長)、アンドラジーナ市長の小野秋夫氏(元福島県人会長)を筆頭に、約300人のOB・OG、来賓が集まった。また来伯中の滋賀県庁関係者二人も出席し、日本の各知事からも祝電が届くなど日伯両国で祝された。
力強い琉球國祭り太鼓の演奏で開幕。あいさつに立った小松会長は、「いろんな方々の努力で50年間続けれてこられ、かけがえのないチャンスを与えてもらったことに感謝」と涙をこらえながら話し、「次の50年に向け、この日伯友好の制度がますます発展することを願うとの期待を込めた言葉に大きな拍手が送られた。
与儀昭雄県連会長、山下譲二文協会長代理、村上ヴィセンチJICAコーディネータ、高橋祐亮在聖領事館副領事が祝辞。
与儀県連会長は、「県費留学を通じ、母県と県人会の関係を深めることができた。各制度が日伯友好の大きな掛け橋となり、友情を生み出してきた。時代は変わってきているが、今後も続いていくよう働きかけたい」と力を込めた。
栢野氏が壇上へ呼ばれると、留学・研修の第一歩を歩んだ「大先輩」へ、全員が起立して温かい拍手を送った。
船で45日間かけて渡日した栢野氏。「今とは違う時代だった」と当時の光景を振り返り、「この留学・研修制度は日伯間に大きく貢献してきた」と位置付け。「僕もまだ終わっちゃいない。ASEBEXのために何かできることがあったら協力する」と話し、会場から歓声と拍手が沸き起こった。
活躍するOBらに表彰状、また県連、文協、領事館、JICA、海外技術者研修協会(AOTS)に感謝状が送られ、ASEBEXコーラス部による歌声が披露された後、鏡割り、元国費留学生の二宮正人氏(サンパウロ大学法学部教授、弁護士、CIATE理事長)の発声で乾杯、食事を囲んで親睦を深めた。
表彰を受けた多田マウロ氏(45)は85年、岩手県費留学で学んだ電気工事設備設計を生かしてエンジニアとして働き、若き岩手県人会副会長として活躍している。
「電話代が高いから、親に電話したのは日本到着後と帰国前の2回だけ。毎週手紙書いて送ってました」と目頭を熱くして振り返りながら、「人生で一番大事な時にチャンスをもらい、かけがえのない経験をさせてもらった。いつも県や親、県人会に感謝している」と話していた。