ニッケイ新聞 2009年11月5日付け
夜10時、リベイラ川対岸で打ち上げ花火が一斉にあがった。目の前の川面には色とりどり、数え切れない灯籠(とうろう)が音もなく流れ、河岸に立つ朱色の鳥居の横では、ブラジル人の若い恋人たちが肩を抱き合いながら、うっとりとその光景を眺めている▼初めて見た灯籠流しは噂に違わず、感動的な光景だった。夜間照明に浮き上がる勇壮な鳥居と、灯籠流しという組み合わせが、まるで一幅の絵のような情緒ある景観を作りあげている。このようなお祭りを楽しみながら育ったブラジル人は、なるほど親日的になるに違いないと納得した▼もちろん2日は「フィナードス」(死者の日)であり、先祖供養の大事な日として、今年55回目となる世界平和祈願並びに先没者慰霊合同法要も、石本妙豊師ら尼僧が司祭し、しめやかに行われた。妙豊師の夫、故恵明師が1954年にこの法要を始めた時、流された灯籠は「南無妙法蓮華経」を示す7基だけだったが、現在では2250基にもなる▼灯籠に書き込まれた名前を見ると、興味深いことにブラジル人家族もチラホラある。法要前に行われた奉納相撲の選手の大半も非日系、花火の前後に行われた盆踊りにも、楽しそうに一緒に踊るブラジル人の姿が多く見られた。レジストロはそれほど日系人口が多くないがゆえに、絶妙な混ざり方をしている。日系人が企画運営し、地元みんなで楽しむ祭りとなっている▼大部一秋在聖総領事はあいさつで「今晩のまん丸の月のようなアミザーデが祭りに満ちている」と表現していた。満月と鳥居と灯籠流し。この組み合わせこそ、「ブラジルのお盆」の醍醐味だと実感。 (深)