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ベ国領で先住民8人死亡=新型インフル感染の犠牲者=困難な辺境部の医療活動

ニッケイ新聞 2009年11月6日付け

 ブラジルと国境を接するベネズエラ領内の先住民ヤノマミ族8人が新型インフルエンザで死亡と5日付バンジニュースやG1サイトが報じた。
 非政府団体(NGO)サヴァイヴァル・インターナショナル(以下、SI)が7人死亡と報告後、ベネズエラ政府が8人と発表し直したもの。
 ベネズエラ、ブラジル両国に約3万2千人が住むヤノマミ族は、アマゾン最大の先住民部族。政府発表の患者数は17人だが、ブラジルのNGO、社会環境研究所(ISA)では患者は400人以上と報告。SIでは、少なくとも1千人以上の患者がいると推測している。
 SIでは、市街地に住む人々より抵抗力が弱いヤノマミ族の場合、新型インフルによる死者は数千人に上る可能性があると警告。今回の流行の責任は、十分な予防処置を講じなかった両国政府にあるとしている。
 ブラジル国立保健財団(FUNASA)によれば、国内の同族からの感染報告は出ていないが、ベ国領内のヤノマミ族から連絡を受けたブラジル領内の同族先住民は、ベ国領内の親族訪問を避けるなどの感染拡大防止策を講じているという。
 一方、ブラジルでは先住民向け新型インフル対策として、11月中を目処に各部族語でのパンフレットを配布。先住民向けの医療活動担当者には、消毒用アルコールや、使い捨てタイプのマスク、エプロンなどが配られている他、現地入り前に1週間の観察期間を置き、新型インフル感染などのないことを確認後に派遣することになっている。
 種々の病気に対する抵抗力の無さと、居住区の閉鎖性に伴う感染拡大は先住民医療の難点の一つで、辺境部での先住民医療には、専門知識の他、野外生活への適応能力、先住民の信頼獲得などの条件も必要となる。また、派遣の際も空軍機やヘリコプターによる移動が必要で、医療スタッフの単独行動は難しい。
 そのような意味で、予防接種のためにアクレ州からアマゾナス州に移動中のFUNASA職員ら11人乗りのセスナ機が故障して川に強制着陸、職員と空軍の保守担当者死亡という10月29日の事故は、先住民医療の実態と犠牲の大きさの一部を物語っている。