ニッケイ新聞 2009年11月7日付け
ブラジルへの投資勧誘に出かけたルーラ大統領は5日、ロンドンで開催されたフィナンシャル・タイムス紙のセミナーにおいて「21世紀は、ブラジルの世紀」と豪語したことを6日付けフォーリャ紙が報じた。
ブラジルは現在、世界第9位の経済成長率に甘んじている。しかし、2011年は7位に、2018年は6位、2026年は5位に成長とマンテガ財務相が付け加えた。ブラジルに為替問題がなければ、中国よりも成長するというのだ。
「ブラジルの悲喜劇は、21世紀を語るより過去を語るほうが、説得力がある」と政治評論家のグスターボ・パトウ氏がいう。ルーラ第1次政権のGDP(国内総生産)は、新興国25カ国中の最低であった。
内容を見ると、少ないポウパンサ(貯蓄投資)預金から資金をかき集め、重税と戦いながら輸出にこぎつけた。だから政府財政は、栄養失調状態であった。政府経費は殆ど年金に当てられ、産業振興や投資どころではなく、不利な経済環境の中にあった。
英国の財界人に向けた大統領のメッセージは、PT(労働者党)政権の社会保障院改革や税制改革、投資基準改革、最低賃金抑制による公務員給料の調整基準を盛り込んだ内容だが、「豪語するほどの内容ではない」とパトウ氏が論じている。
ルーラ第2次政権におけるGDPは、2007、8、9年と、時を経るに従い回復した。2010年にはようやく、期待するGDPに達しそうだ。いまや草木もなびくブラジルというが、説明の必要があるようだ。
「過去の低率GDPの言い訳にならないよう注意すること。ルーラ政権に入って、改革は何も行なわれていない。政府債務は増え、PAC(経済活性化計画)は開店休業。国際競争力56位は、何も改善されていない」と同氏が指摘した。
世銀は、ルーラ政権の貧困対策を酷評。支持票買収には効果があったが、ブラジルの貧困者率は中国やインド並みと世銀が憂慮。ルーラ大統領は得意の弁術で、過去に囚われず輝けるブラジルの未来を強調するので煙に巻かれると論評。