ニッケイ新聞 2009年11月10日付け
落ち葉であしらわれた「文化祭」とポップなバルーンアートというちぐはぐな文化の融合―。この時期各地で文化祭が行われているが、ブラジル人が多く住む愛知県・知立団地の自治会でも団地内の集会所を会場に文化祭が開かれ、ブラジル人の作品も展示された。本紙の元研修生、秋山郁美通信員がレポートする。
日ポ両語で「文化祭」と書かれた入口から足を踏み入れると、まず目に入るのが、桜の花と日本人ではなさそうな女性の肖像画。そして受付のように、ポ語の相談コーナーが設置されている。奥では日本人の年配女性がブラジルのコーヒーとお菓子を出してくれる。
展示室に足を踏み入れると、写真や絵画、手工芸品が並ぶが半数はブラジル人の作品。日本の景色が描かれていても、滲み出てくる色彩感覚の違いが伝わってくる。
また、展示の中には団地内に不法投棄されたゴミの写真や、移民の写真に聖書の言葉をつけた興味深い作品も。
人物のイラストや風景画、迫力のある金閣寺など、多数出品しているのは大見謝(オミド)エバリストさん(37、三世)。大見謝さんは週に1回この集会所で絵画教室を開いている。教室には豊田市の保見団地や県外からも生徒が集まる。
文化祭に外国人住民も参加するようになったのは3年目。それまでの10年間、文化祭は中止されていた。
自治会長の高笠原晴美さんは「団地内に外国人が増えてから環境や住み方に適応してもらうのに力を注がなくてはなりませんでした。そうでないとここが崩壊してしまいそうで文化祭どころではありませんでした」とその理由を話す。
その甲斐あってか治安悪化は防がれ、同じ地域の住人として参加できるイベントを、と復活することになった。
「通訳の方に声をかけてもらいブラジルの方にも出品してもらいました。2年目の去年はたくさん出たのに、今年は帰国した方が多くて減ってしまったのが残念」と話す。
同自治会では、文化祭以外にも夏祭りでもサンバを取り入れるなど日伯文化の融合が積極的に試みられている。
仕事を失った外国人が増えたため、今年6月から自治会主催の日本語教室も開催した。
「国は外国人を入れるだけ、企業は働かせるだけ、地域住人への負担が大きすぎる」と高笠原会長。現在も帰国するための退去とよそからの入居が続き、その対応に追われている。
「年末に向けて引っ越していかれる方が多いです。ここの日本人は年配が多いから外国人の名前覚えられなくて、ゴルバチョフに似ているからゴルバチョフさんと呼ばれている方もいたんだけど帰ってしまいましたね」と高笠原会長。
その言葉には、外国人集住地でよく聞く軋轢よりも、同じ地域住民としての友情がにじみ出ていた。規模こそ小さい文化祭だが、国や地方に任せられない、住民レベルの住環境の維持への努力や、文化的生活を楽しむことの大切さが強く込められている。