ニッケイ新聞 2009年11月18日付け
パレスチナ解放機構(PLO)議長でもあるパレスチナ自治政府(PNA)のマハムード・アッバス議長は19日の来伯に先立ち16日、「パレスチナ国家の承認取り付けが、訪伯の目的である」の声明発表と17日付けフォーリャ紙が報じた。
同議長は現在、微妙な立場にある。イスラエルとの平和交渉に進展が見えず先週、必ずしも議長再選に拘らないと表明。国際社会は同議長の引責で中東に真空地帯が生じることを懸念し、同議長の翻意を促した。
訪伯は同議長にとって引責示唆後、初めての外遊となる。いわば平和交渉で、イスラエルに圧力をかけるための外交戦略といえる。同議長は特に米政府に対し、ガザ地区とヨルダン川西岸地区、東エルサレムにおけるパレスチナ独立だけでも認めて欲しいと願っている。
ガザ特別区は2005年、イスラエル政府によって一方的に奪取され、現在に至るもイスラエル軍によって占領支配されている。
PNAは16日、EU共同体に対し正式に、パレスチナ独立の支持を要請した。これは国連でパレスチナ国家の発足決議をしてもらうための予備段階といえそうだ。
独立支持取り付けの世界行脚で、南米訪問を行なうとPNAは発表した。PNAはブラジルの支持を得られるものと期待している。ブラジルの次は、アルゼンチン、チリを経てEUへ向う予定となっている。
米国務省は16日、「双方が交渉の席に就いて初めて、パレスチナ国家の設立が可能」とする公式見解を示した。ヨルダン川西岸地区の自治権確立はPNAが合意、公式に発足と見られている。もしもPLOの一部が独走するなら、イスラエルは併合を示唆している。
これまでイスラエルとパレスチナの問題は、いつも一方的にことが進められた。一方的な行為は、怨恨的な抵抗を生む。イスラエルの力の示威に対し、パレスチナは二枚舌外交で応戦と国際会議で指摘された。
アッバス議長率いるPNAの訪伯は、パレスチナ国家承認であって仲介要請ではないようだ。昨年末のイスラエル軍によるガザ侵攻は、国連安保理によって不当行為と戒められたが、戦争犯罪の審理には至ってない。