ニッケイ新聞 2009年11月19日付け
中国の皇帝から贈り物を受けたフランスの王様がお返しに、愛玩犬をプレゼントした。しばらくして礼状が届いた。「陛下、素晴らしいものを有難う御座います。大変美味しく頂きました」。以来、両国の関係がギクシャクしたかは知らないが、文化の違いをテーマにした小話だったと記憶する▼路上で犬を捕まえて屠殺し、サンパウロ市ボンレチーロ区の韓国料理屋に卸していたブラジル人夫婦がこのほど逮捕された。「韓国では専門に飼育しているから安心だが、ここでは何の犬か分からないので食べない」とこだわりを見せる同区在住の知人に電話したところ、今回の件で犬肉を提供する数軒のうち、閉まったのは1軒だけだとか▼個人的にいえば、2006年の戌年の締め括りに忘年会で食べたきり。ゼラチン質たっぷりの滋味あふれる犬鍋の魅力は捨てがたい。広辞苑によれば、〃羊頭狗肉〃は、「見かけが立派で中身が伴わない」という意味だが、その味は羊にも劣らないし、韓国では補身湯と呼ぶように、非常に栄養価の高いものだ▼犬食批判の代表格フランス人は、平和の象徴鳩や愛らしい兎を喜んで食べる。ナイフで「切」って、フォークで「刺」す食事方法も野蛮だ。しかし、それは言わないでおこう。他文化を批判すること自体が野蛮以外何ものでもないからだ▼気になることが一つ。フォーリャ、エスタード両紙(ともに13日付け)によれば、夫婦は猫肉も扱っていたとか。韓国に猫食文化はないようだが、どこに卸していたか。混ぜていたなら〃狗頭猫肉〃。食に貴賎はない。化けて出られるのを覚悟のうえで試してみたいものだが。 (剛)