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ニューヨーク・タイムス紙=イラン大統領訪伯を危惧=「火中の栗拾うもの」=ブラジル発展の妨げに=ルーラ大統領は静観の構えか

ニッケイ新聞 2009年11月24日付け

 ニューヨーク・タイムスは23日、ブラジル政府に対し「世界の火薬庫である中東問題に、ルーラ大統領が仲介の労を取るのはよいが、アハマディネジャド大統領を招くのはブラジルにとって火中の栗を拾うもの」と警告したことを同日付けテーラ・サイトが報じた。同紙はホワイト・ハウスの西半球担当官エリオット・エンジェル氏の談話「ルーラ大統領はホンジュラスやコロンビアにおける米外交批判に続き、中東政策でも同様批判を論じかねない」と評したことを報じた。

 ブラジル国民と国家の発展にとってイラン大統領の訪伯は、障害になるという同紙の警告だ。ルーラ大統領の積極的な働きでイスラエルのシモン・ペレス大統領やパレスチナ自治政府のアッバス議長を招き、中東和平交渉に動き出したことを同紙は危惧した。
 同紙の論評では、これまで米政府が行なってきた中東外交に、ブラジルが乗り込んで世界各国の外交努力を無にすることになりかねないという。イランに集中する国際間の批判を、ルーラ大統領は静観の構えのようだ。
 アハマディネジャド大統領の訪伯は、国際社会の思惑を踏みにじるものと同紙が見ている。ホワイト・ハウスのエンジェル担当官は「イラン大統領の公式訪問は、国際社会にイランの持論を訴え妥当化するもの」で露骨なルーラ大統領のいやがらせだと批判した。
 同大統領の訪伯で、ルーラ大統領と同じように国民も、イランの持論に耳を傾けるものと見ている。同大統領の訪伯で、ブラジルは貧乏クジを引き、伯米外交関係は悪化すると、同担当官が恫喝と同紙は報じた。
 同日付けガゼッタ・ド・ポーヴォ・サイトが、ブラジル政府は中近東諸国の要人を招くのに、多大な犠牲と努力を払ったとしている。また米国とイラン接近のためには数々の難関がある。先ずイランは先進諸国の核協定締結の呼びかけに対し、公式回答を避け時間稼ぎをしている。
 イランは同協定にセーフ・ガード(緊急対策)方式を設けて、濃縮ウラン開発への抜け道を温存しようとしている。核開発による原発用燃料の輸出では、ブラジルも同様の計画を持っている。ルーラ・アハマディネジャド会談では、ウィーン核拡散防止条約の範囲で両国の核開発計画が話し合われるはずだ。
 次の山場は同大統領とオバマ米大統領を引き合わせるため、イスラエル政府に目をつむってもらうこと。米イスラエル軍事協定が障害になると予想されるからだ。
 ルーラ大統領は、中東和平の大きな鍵をアハマディメジャド大統領が握っていると見ている。しかし、中東和平への対話の道は、イランが望んでも現実として閉ざされていると、ルーラ大統領がいう。