ニッケイ新聞 2009年11月24日付け
サンパウロ州政府に26人いる長官の中で唯一の日系人、州知事警護を担当するカーザ・ミリタール長官、キタ・マサオ・ルイス軍警大佐(50、二世)がコーディネートして、第5回民間防衛(Defesa Civil=国民保護ともいう)国際セミナーをサンパウロ市アニェンビー国際会議場で行い、全伯はもちろん中米、アフリカ諸国からも消防隊員や警察関係者ら約8000人が集まって熱心に先進事例を学んだ。
キタ大佐は、佐賀県出身の父マサオさん、熊本県出身の母メイコさんから58年12月にサンパウロ市で生まれた。「父はセアザに長いこと働き、子供が軍人になることを期待していた。それに応えられて嬉しい」とキタ大佐。79年にバーロ・ブランコ士官学校に入隊し、以来、30年間勤務している。現職には08年5月に就任したが、その前に父がなくなった。
現在、全州に一人ずつ任命されている州民間防衛コーディネーターにも就任しており、サンパウロ州内で洪水や地震などの災害が起きたときの緊急避難や援助も指揮している。
キタ大佐は「今年はサンパウロ州からサンタカタリーナ、マラニョン、ピアウイ、リオ、北大河州などの洪水被害地域に救援物資や医薬品を送っている」という。
3年前にはJICAの招待で、12人の警察官を引率して日本に交番制度の視察研修にも参加し、20日間、現場を自分の目で確かめてきた。
「サンパウロ州では日本の交番制度を参考にして、地域警察(ポリシア・コムニターリア)を創立した。これは警察というあり方を根本から考え直させるような大変化をもたらした。地域社会と密接な関係を築くことで、防犯に高い効果を見せている」と高く評価する。
この地域警察というあり方はサンパウロ州から全伯へ普及され、中南米、アフリカ諸国にも広まりつつある。「ブラジルはサッカーW杯、リオ五輪と国際的大イベントを控えており、間接的に交番制度がよい影響を与えているといえる」という。
2年に1度開催されるこの国民防衛国際セミナーだが、コーディネーターの腕次第で集まりは大きく左右されるというが、今回は過去最高の8000人を記録した。ここ数年の異常気象による多発する水害もあって、すべての州から代表が集まった。
また会場入り口には、日系の防水テント製造会社サンスイによる、災害現場に短時間で設営でき、必要に応じて次々につなげて拡大できる特注の司令部用テントの見本も置かれ、関心を集めていた。