ニッケイ新聞 2009年11月28日付け
ルーラ大統領は26日、ホンジュラスでセラヤ大統領の復権がないまま、米政府主導で29日執行される選挙を否認する意向だと27日付けフォーリャ紙が報じた。「民主主義を標榜する国々は、クーデターによって設立されたホンジュラス臨時政権下で行なわれる選挙を拒絶すべきだ」と大統領は声明を発表した。ブラジルはたとえ、米政府の意向に逆らってもクーデターという方法を認めないと、記者団に宣言した。アモリン外相は、クリントン米国務長官との電話会談も行ったが、ブラジルが一線を画し、南米諸国を2分させた。
ガルシア大統領顧問が25日、ホンジュラス問題はOAS(米州機構)の手から離れ、米政府へ渡されつつあると語った。ルーラ大統領が同問題での譲歩を強く否定し、従来路線を堅持する意向を示した。アモリン外相は、意見の相違が即対決ではないと表明。
伯米両国はホンジュラスを巡って対峙することになり、見解の相違がもうひとつ増えた。同件に対するブラジルの見解は、不動のものであることを示威した。
OASの不協和音は、同機構を伯米両派の真っ二つに割った。ガルシア顧問は「同問題は複雑でOASの手に負えないし、セラヤ大統領が伯大使館に幽閉中は、同国をOASの采配に任せられない」という。
それでも米政府は、OASに頼っている。しかし、ラテン・アメリカにはOASに対する不信感を植え付けた。セラヤは29日の選挙後、次期大統領に政権を引き継ぐまでの一時復権ということのようだ。
伯米間の腕相撲は、これからの南米地図を色分けすることになりそうだ。コロンビア、ペルー対ブラジル、べネズエラ、ボリビア、エクアドルの構図だ。中米はセラヤ一色。ブラジルの言い分が通るためには、3分の2の国の支持が必要だ。
ブラジルの対米批判に続き、アモリン外相が腹を割って話そうと提言した背後に南米諸国のうっ憤が伺える。伯米間に対決姿勢はないが、越えられない溝があることを否めないとガルシア大統領顧問が語った。
米外交を熟知するアモリン外相は、「ブラジルには、米国に関する迷信がある。逆らうと災いを被るということ。適当に調子を合わせないと、ブラジルの頭に雷が落ちる」と皮肉った。
オバマ米大統領からルーラ大統領に送られた書簡3枚は、3点に触れた。ホンジュラスとドーハ・ラウンド、イランとの関係だ。この3点で伯米両国は、対峙しているようだ。
ルーラ大統領は26日、オバマ大統領向けに柔和な返信を送った。内容は親展だが、中東紛争に関するルーラの見解とハイチ問題、両国間の意思の疎通など。