ニッケイ新聞 2009年12月2日付け
11月26日に群馬県であった外国人集住都市会議の提言として「外国人庁設置」が掲げられたのを歓迎したい。そこで議論されたように、在日外国人の日本語学習機会を充実させる方向性は重要だ。ただ強調したいのは、10代半ばを過ぎて外国語で人格形成を終えた世代と、それ以前の頭の柔らかい子供では考え方を変え、とくに後者への対策に比重を置くべきではないかという点だ▼10代半ばを過ぎた世代にとって日本語は母語にはならない。第2外国語であり、日本人同様になるのは難しい。しかし、子供は別だ。10年先を考えた場合、日本語で読み書きできる市民になる可能性がある。この2言語世代をいかに早く厚くするかが移民政策の要だ▼ブラジルの日本移民がそうであったように、現地で育つ二世は親にとって社会を知る目であり耳だ。いずれ親は定年を迎え、子供の世話になる。子供の将来の所得がしっかりしていないと社会全体が大変な問題を抱える。いかに外国人子弟を日本の公教育に吸収するかが、外国人家庭安定の鍵だと思えば、その子弟への教育が義務化されていない現状は実に嘆かわしい。この点こそが日本の移民政策の分水嶺になるだろう▼愛知県には生徒の半分が外国人という小学校まである。そんな現状なのに外国人子弟には義務教育でないとは・・・。日本語でも母語でも教育を受けない子供が日本で育つことを見逃していいのか。国際化した現場に文科省の考え方が追いついていない▼と同時に、国内の外国人と国外に住む日系人はコインの裏表だ。外国人庁ができるなら、在留邦人や日系人も含めた総合政策を考えてほしい。 (深)