ニッケイ新聞 2009年12月3日付け
邦字紙新聞記者を始めたころ、文協の事務局長を46年間務め、2003年に亡くなった安立仙一さんに色々と教えてもらった。一番よく覚えているのは「地方に行かなければ、コロニアは分かりませんよ」という言葉だった。先日それをしみじみと思い出した▼知人に誘われ、コチア市にあるカウカイア・ド・アルト郡のカウカイア文協を訪れた。お色直しが終了した会館のお披露目パーティー。聞けば、わずか会員34家族。しかしその結束力には目を見張った。会館改修の費用5万レアルを捻出するため、会員総出で様々なイベントを8年間、実施した。会員の協力を労うため、月に2回、夕食会も開いた。それぞれが厨房に立ち、自慢料理を振舞うことで信頼関係が生まれたという▼上村優博会長によれば、4万人が住む同郡の日系家族数は約100。それが分かったのも昨年、同文協で開催した100周年式典への参加を促すため、役員らが一軒一軒のドアを叩いたからだとか。6月29日の開催日には、「当時の郡長を始め、350人が集まり、盛会だった」▼2アルケールの敷地にある野球場や生徒のいない日本語学校が往時を物語る。多くのイベントが開かれた頃を懐かしむ声と同時に、100周年での出会いと会館改修を機会に、会の活性化を願う声もまた多かった▼大部一秋総領事から揮毫色紙が贈られたのだが、その文字が「心」と思い、挨拶の文句を用意した上村会長、受け取ってみると何と「志」。冷や汗をかきかき、スピーチをこなしていたのはご愛嬌。小粒ながらピリリと辛い。同文協が心も志も持っていることは確かだ。 (剛)