ニッケイ新聞 2009年12月4日付け
サンパウロ市南部にあるファベーラ、モンチ・アズール(500世帯、2千人)で11月29日、毎年恒例の「日本祭り」が開催された。モンチアズール・コミュニティ協会(ウテ・クレーマー代表)の協力のもと、日本人ボランティアが主催した同祭には、同ファベーラに住む住民が子どもから大人まで大勢が参加した。
同協会は社会的、文化的に違う人々の間に架け橋を作るという考えのもと、シュタイナー学園の教師ウテ=クレーマー氏らによって1979年に創立。
世界中からボランティアが集まり、教育や文化、環境などの分野で協力し、日本人も数名参加し、共同生活を行う。
日本祭りは、日本人ボランティアによって88年に始まった。同地で1年5カ月間活動している福井俊紀さん(22、大阪)は「祭りを通じて異文化を体験してもらいたい」と目的を語る。
住民らは、ボランティアが作るヤキソバやかき氷などに舌鼓、アートや漢字などのワークショップを体験、ボランティアと住民らが積極的に交流する姿が会場のあちらこちらで見られ、賑わう一日となった。
陽に焼けた顔で忙しく動いていたのは、9月から同地で働く藤岡新光さん(23、大阪)。
日本で社会科の教師を目指したが、「自分に何ができるか」と疑問を感じ、来伯した。
午前中は敷地内にある保育園で幼児の手伝い、午後は車椅子の女の子と一緒に絵を描く生活を送っているという。
「(ファベーラの)イメージは悪いものだったが、ここは組織や挨拶がしっかりしている。また、自分の存在を感じることが出来る」と話す。
運動場内には「汚れた川」や「大気汚染」など、環境をテーマに子ども達が描いた絵が貼られ、地元住民がファベーラ内のゴミ拾いも行い、廃棄分別を学ぶなど環境もテーマに。
長蛇の列ができたのは、子ども達の腕や足に漢字にした名前を書く「漢字コーナー」。腕に書かれた漢字を自慢気に見せる子ども達の笑顔で溢れた。
また、ステージの床をキャンバスに、子ども達が絵の具を使い、伸び伸びと絵を描く姿も。作品は、日本とブラジルが地球のトンネルで繋がっているものだ。
夕方―。日差しが和らいだところで白と赤の鮮やかな浴衣を着たエスペランサ婦人会の女性10人が登場、盆踊りを披露した。
遠巻きに見つめていた住人らも、最後の曲では自然に体を動かし、全員で楽しんでいた。
その他、岩手県人会の太鼓グループ「雷神太鼓」11人による力強い演奏が披露された。
最後にはボランティアも住民も一緒になって総勢40人でYOSAKOIソーランを踊り、大団円を迎えた。
福井さんは、「こんなに長い間、住民が広場にいることはない。色々問題はあるが、実行することに意義がある」と満足げに話していた。