ニッケイ新聞 2009年12月10日付け
最近マスコミを賑わせている連邦直轄区(DF)知事の裏金疑惑等、汚職蔓延のブラジルで9日、ルーラ大統領が汚職関係者への罰則強化などを図る法案の議会提出を決めたと発表された。
9日付G1サイトやフォーリャ・オンラインなどによると、国際反汚職・腐敗デーの9日に提出と発表された法案は、公職にある者が贈収賄や公金横領などの罪を犯した場合、処罰内容を現在以上に重くするというもの。国や州の長など、役職によっては刑罰倍化などを盛り込んでいる。
8日付G1サイトには、国内の汚職蔓延の原因の一つは、汚職事件を起こした者が処罰されないまま終る事だとの最高裁長官の声も報道
9日のBBCBrasilによれば、汚職問題の専門家は、ブラジルの汚職への取組みの問題点として、議員特権などで捜査や逮捕を免れたりした政治家が、その後も処罰されないまま、うやむやになったりする事も指摘。経済的に急発展した国では汚職も多いというが、政治家に便宜を図ってもらおうとする企業家達による贈収賄事件は、選挙資金供給その他の形で、各地で起きてもいる。
DFの場合は、金をやり取りする現場映像も公開され、責任回避が困難だが、裏帳簿などで資金の流れを隠す手口は南大河州知事選でも起きた。
サンパウロ市長や市議への不動産業界からの献金疑惑など、選挙絡みの贈収賄事件は多いだけに、来年の選挙戦でも、同様の不正が起きる可能性は高い。
この様な時期に、大統領が汚職厳罰化などを盛り込んだ法案提出との話は、種々の疑惑への目をそらす戦術か否か、議員達が提出された法案成立を本気で考えるか否かは不明だが、DF裏金疑惑では、受け取った金を靴下や下着などに隠す様子が世界中に流れた後だ。
国際的非政府団体調査によるブラジルの政治の透明度は10年前と不変。国民に識字力がなく、政界などの事件を知らない、理解できない事も汚職蔓延の原因の一つだ。教育やモラルの欠如が情報公開の道を閉ざし、国や国民に多大な損失を及ぼす汚職蔓延を容易にするなら、ブラジルの実態は、国民に教育がない方が政治がし易いと発言した政治家もいた数十年前と何も変わっていない事になる。